Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『円のゆくえを問いなおす』

先日は、リフレ派の論客のひとり、経済学者の田中秀臣さんの著作を取り上げた。

今日はこれまたリフレ派の論客である、経済評論家の片岡剛士さんの著作を取り上げることとしよう。

 

本著『円のゆくえを問いなおす 実証的・歴史的にみた日本経済』筑摩書房は、サブタイトルを見るとなにやら難しく感じられるかもしれないが、一般の人向けに書かれた解説書であり、平易なですます調で書かれている。

分かりやすさをかなり意識しているのだろう、本著では「ここまでの内容をまとめると」という文言が頻出し、重要な箇所は太字で書かれている。読者へのサービス精神がたっぷりだ。

同じく一般人向けの経済書で、要所が太字でまとめられた安達誠司さんの著作とよく似ている。

もっとも、「文章が平易であること」と「内容が高度である」こととは、実は両立しうるのだ。

本著で書かれている内容はかなりハイレベルなものなので、経済学にあまり明るくない読者が一読しただけでは、なかなか頭に入らないかもしれない。

そういう場合は、何回か繰り返して読むことをお勧めする。あるいは、経済評論家の上念司さんや安達誠司さんの著作を読んで、それからあらためて本著を読みなおすと、よりスムーズに理解できるようになるだろう。

 

本著は、刊行当時(2012年5月)日本経済を苦しめていた円高について、その原因をさぐっていくところからはじまる。

次に、世界経済のこれまで歩みーすなわち、戦前の金本位制から戦後の固定相場制、そして現代の変動相場制について、こまかく説明がなされる。

片岡さんも、世界恐慌の原因を金本位制に見ている。先日取り上げた上念さんの著作と同様だ。

終盤では現代日本へと話が戻り、日本社会を苦しめているデフレと円高を止めるために何をすべきなのかが説明される。

この終盤は一種のQ&A方式となっており、あらかじめデフレ派ーリフレ派に反対する勢力を、こう呼ぶことにするーによる質問が想定され、それに片岡さんが反駁していく、という形式をとっている。

これを読めば、リフレ派の考えが読者の頭のなかにストンと入ることだろう。そして読者もまた、“リフレ派新一年生”となって経済論争に参加することができるのである。

 

 

さて話は変わるが。

リフレ派の論客たちは、もちろん頭脳はすこぶる明晰であるが、一方で、性格的には一癖も二癖もある人が多い。そんななかにあって、片岡さんは非常に温厚、真面目で、かつ謙虚な方だったのが、強く印象に残っている。

「なんだ、まるで実際に会ったかのような口ぶりだな」と思われるかもしれない。

「かのような」ではない。実際に会ったのだ。

僕が片岡さんに初めてお会いしたのは、都内某所にて開かれた田中秀臣さん主宰のトークイベントでのことである。上記のような性格ゆえ、僕は片岡さんにとても好印象を抱いたのを、今でもよく覚えている。

その片岡さん、この夏から日銀審査委員に就任することとなった。実に喜ばしいニュースだ。彼のような有為な人材こそ日本国家のために貢献してほしい、と切に願っている。

 

円のゆくえを問いなおす―実証的・歴史的にみた日本経済 (ちくま新書)

円のゆくえを問いなおす―実証的・歴史的にみた日本経済 (ちくま新書)