Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『つぎはぎ仏教入門』

評論家・呉智英(くれ・ともふさ)さんについては、以前このブログで著書を取り上げたことがあった。

 自ら「封建主義者」を名乗り、「差別もある明るい社会」をスローガンに掲げるなど、アイロニカルな論考が魅力の評論家だ。

 

今日ご紹介するのは、そんな呉さんによる仏教の入門書『つぎはぎ仏教入門』筑摩書房である。

この本の特色はなんといっても、そのおそろしいまでの分かりやすさ

仏教というのはなにやらフクザツでよく分からない代物だと、おそらく多くの人が感じていることだろう(僕もそうだった)。本著ではそんな仏教が、実に分かりやすくコンパクトにまとめられているのだ。

仏教について知りたい、でもどの本から読めばいいのか分からない、と途方に暮れている人がいたら、僕はまず本著から読むよう勧める。本著を起点として、仏教の豊饒な世界が読者の前に開かれるはずだ。

 

本著は全5章からなり、文庫版ではさらに補論がふたつ載せられている。個人的に面白いと思ったのは、第5章だ。

この章のなかで、呉さんは仏教界の安直な「社会参加」を戒めている。

僕も呉さんに賛同する。

宗教の「社会参加」と聞くと、我々はすぐボランティア活動を連想してしまう。「それならもっとやればいいのに」と思ってしまう。

だが考えてもみれば、呉さんも本著のなかで書いているように、イスラーム教のジハードだってれっきとした「社会参加」なのである(※)。安直に、宗教に対して「もっと社会参加を!」などと危険なことを、果たして言って良いものだろうか。

我々はもっと、「宗教とは元来危険なものである」という点を理解しなければならないのではないか。そしてこの場合の「宗教」とは、なにも新興宗教に限らないのである。

※おそらく、現在、いわゆる世界三大宗教のなかでもっとも「社会参加」に熱心なのは、イスラーム教だろう。

 

第5章ではこの他、仏教のなかにある女性差別的な発想が俎上に載せられ、批判されている。

この点、「封建主義者・呉智英」が意外にもフェミニズムと親和性があることが垣間見え、とても興味深かった。

 

つぎはぎ仏教入門 (ちくま文庫)

つぎはぎ仏教入門 (ちくま文庫)