Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第168回)

・『パピヨン

植民地帝国はたいていの場合、流刑植民地を有していた。たとえばそれは、大英帝国にとってのオーストラリアであり、ロシア帝国にとってのシベリアであった。

ではフランスの場合、流刑植民地はどこであったか。

南米大陸の、仏領ギアナがそれであった。

本作は、その仏領ギアナに島流しにされながらも、懸命にそこからの脱出を試みる男たちの物語である。

主演は、スティーブ・マックイーンダスティン・ホフマン

このふたりの名優が、また実に良い演技を見せてくれるんだw とくにダスティン・ホフマン。彼は『レインマン』でも自閉症の男性の役を好演していた。いい役者さんだ。

もちろんスティーブ・マックイーンだって負けちゃいませんぜ。長年の牢獄生活のせいですっかり老いさらばえてしまった主人公を、ラストまで熱演している。

本作の舞台、仏領ギアナは、青い海と熱帯の植物が印象的な、南の国だ。なんだか素晴らしい楽園のようにも思えるが、同時にこの大自然が脱獄を阻む天然の障壁ともなっているのである。そんな仏領ギアナには、「熱帯のシベリア」という言葉が最もふさわしかろう。

さて、この仏領ギアナ、第二次大戦後に植民地から海外県へと昇格、21世紀の今日に至るもなお仏領として残っている。もちろん流刑制度のほうは廃止されたけれど。

 

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・『カラミティ・ジェーン』

ハイ、今月のワーストねw

とんでもなくガサツな女主人公、通称「カラミティ(疫病神)・ジェーン」の活躍を描いた作品なんだけど……

とにかく主人公の演技がいちいちオーバーアクションでウザイ。この点、黒澤明隠し砦の三悪人』のヒロインの演技とも似る。

この主人公がダメなのは、「男勝り」をただの粗野とはき違えていることだ。これでは男勝りではなく、ただの「一生懸命背伸びして男の真似をしているだけのイタい女」で終了である。

 

 

・『カルメン

おなじみのミュージカル『カルメン』を、舞台を20世紀アメリカの黒人社会に置き換えた映画。

キャストが全員黒人というのが見どころだ。

カルメンがカッコよくて、なかなか (・∀・)イイネ。先の『カラミティ・ジェーン』の目を覆いたくなるような女主人公を見た後だと、本作のカルメンがとてもまぶしく見えるw

うんうん、「カッコいい女」ってのはやっぱり、こういう女のことをいうんだよね。

 

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・『カンカン』

19世紀末のパリ。猥褻だというので騒がれたカンカンの禁止問題をめぐって、カフェの女主人とその弁護士が華やかなコメディを繰り広げる。

本作は、ミュージカル映画。弁護士役を演じるのは、あのフランク・シナトラである。

もっとも、肝心の映画の出来はというと…、お世辞にも高いとはいいがたい。

とはいえ、終盤のアダムとイブの楽園追放を描いた劇中劇だけは、一見の価値あり。

 

 

・『キャバレー』

1931年のベルリンを舞台に、若い男女の退廃的なロマンスを一種のグランドホテル形式で描く。

ヴァイマール共和国時代末期の、あの独特の妖しい雰囲気を、本作はよく捉えている。

本作における狂言回し的存在が、ジョエル・グレイ扮するキャバレーの司会者。本作に充満する禍々しい空気を一挙に引き受けたかのような、なんとも不気味な役どころだ。

時は1930年代。ベルリン市民の生活に、徐々にナチスが暗い影を落としていくところが、本作の見どころである。

中盤、なんとも印象に残るシークエンスがある。屋外のカフェにて、立ち上がって歌を歌う美しい青年がいる。カメラが徐々に下に向けられると、その青年は腕に鉤十字の腕章をつけているではないか。彼は、ナチス党員だったのだ。人々はその美しいナチ青年に、温かいまなざしを向ける。

ナチス=醜いと決めつけるのは現代人にありがちな錯誤であり、危険だ。本物のファシストは、美しいからである。ファシストは醜いとの先入観にとらわれると、本物の美しいファシストを見たときに、それがファシストだと気づかず、その脅威を見逃してしまう恐れがある。

美しいからこそ、我々は警戒しなければならないのだ。