Furusawa Keisuke's blog

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書評『日本はどう報じられているか』

日本人は、海外からの目を非常に気にする民族である。

昔から『○○人から見た日本』といったタイトルの本には事欠かないし、現在でも「見てください! 海外から来た観光客たちはこんなにも日本を絶賛しています!!」といった類の日本礼賛番組は、とても多い。

では、実際のところはどうなのか。

そこで本著『日本はどう報じられているか』(新潮社)である。

タイトルの通り、本著は海外諸国における日本の報道のされ方について、その国の専門家が書いた論考をまとめて一冊の書籍としたものだ。ビミョーに古い本なのが難点だが(2004年刊行)、本著を読めば、世界が日本に対して向けている眼差しがだいぶ理解できるだろう。

 

本著の内容をおおまかにまとめると、こんな感じである。

イギリス:日本にはあまり関心がない。日英同盟を知らない(!)というイギリス人が大半なんだとか。

フランス:こちらもイギリスと似たり寄ったり。曰く「(日仏間に)関係はあっても政治はない」のだとか。

ドイツ:僕がこう言うと周囲の人は驚くのだが、ドイツという国は、意外と反日である。本著でも、経済停滞を続ける日本に、ドイツ人の向ける眼差しは極めて冷たい。

アメリカ:こちらも日本の経済停滞にはかなり厳しいが、アメリカにおける反日的な報道は、実のところジャーナリスト個人の問題によるところが大きいと指摘されている。なかでも悪名高いのがニコラス・クリストフである。

アラブ諸国これについては後述。

中国:(少なくとも本著が刊行された00年代当時は)日本に関する報道が少ないため、たとえば「女体盛り」などといった奇妙な行為が日本の伝統として紹介されるらしい。

韓国:本著が指摘するのは「反日」の大衆化ーすなわち政府やメディアによる反日キャンペーンから、大衆による自発的な反日への変化である。しかし本著は一方で、対北朝鮮政策をめぐる韓国内部の対立が激しくなっていることから、≪いよいよ「植民地の過去」よりは「朝鮮戦争」の記憶をめぐる戦いが韓国の政治の前面に浮上したと見るべきなのだろうか。≫(203頁)と結んでいる。こうした見方が近視眼的に過ぎたことは、今日の文在寅政権を見れば明らかである。

 

さて、本著で最も興味深いのは、アラブ諸国の日本を見る目である(この章の執筆者は、池内恵氏)

9.11テロの首謀者オサマ・ビンラディンは、アル・ジャジーラのインタビューのなかで広島への原爆投下について言及している。これはなぜか。

これはなにもビンラディンに限った話ではなく、どうやらアラブ世界では、「ヒロシマ」は米国による一般市民無差別虐殺の象徴であり、だからこそ「かつてヒロシマで市民を虐殺した米国は、したがって同様に(テロで)市民を虐殺されても文句言えないのだ」という具合に、テロ肯定の根拠として利用されているようなのだ。

言うなれば、ヒロシマは反米の免罪符なのである。

これまで日本人は、ヒロシマを平和主義の象徴として世界に発信してきた(つもりだった)のだが、どうやらそのメッセージはアラブの人々には誤読されて伝わってしまったらしい。

 

イラク戦争のとき、「アラブの人々は親日的です! そんな親日的なアラブの人たちを見捨てて、日本はアメリカにつくんですか!」といった批判が多く見られた。

たしかにアラブ人は親日だろう。だがその「親日」の裏には、以上に述べたような誤読があるのである。その点は、しっかり理解しなければならない。

 

日本はどう報じられているか (新潮新書)

日本はどう報じられているか (新潮新書)