Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『現代人の論語』

評論家・呉智英(くれ・ともふさ)さんの書く文章は、とても分かりやすい。

先日取り上げた『つぎはぎ仏教入門』はおそろしいまでに分かりやすい本だったが、本日ご紹介する『現代人の論語筑摩書房もまた、古典中の古典である『論語』を、とても分かりやすく解説してくれる著作である。

 

論語』には孔子の教えや、その弟子たちの言動が多く記されている。

僕が本著を読んで面白いと感じたのは、孔子本人よりかはむしろ、個性豊かなその弟子たちのほうであった。

孔子一門のなかで最も優秀だったのは、顔回という弟子だ。

だが『論語』のなかで登場する回数が最も多いのは、この顔回ではなく、子路という弟子である。

子路は、言っちゃナンだが、決して優秀な弟子ではなかった。がたいが良かったらしいが、頭のほうは……。ネットスラングでいうところの「脳筋」に近かったのかもしれない。だが、それゆえにこそ『論語』読者に強い印象を残すのが、この子路なのだ。

学校でも、本当に先生の記憶に残るのはむしろ劣等生のほうだといわれる。

劣等生・子路は、むしろ劣等生であるがゆえに、孔子から、そして後世の読者たちからも、愛され続けたのである。

これは余談だが、孔子の弟子たちのなかで僕が個人的に一番気に入ったのは、子貢である。なんとなく、自分に一番似ていると感じられたからだ。

 

孔子は、このように多くの弟子に恵まれた。

僕には、本著の著者である呉さんが、なんとなく孔子の姿とダブって見える(なんて書くとご本人は照れるだろうけど)

孔子のまわりに常にたくさんの弟子がいたように、呉さんもまた、多くの弟子に恵まれた。たとえば浅羽通明さんといったアクの強い評論家が、彼のもとから輩出されたのである。

呉さんは、在野の評論家であって、アカデミズムの人ではない。

それでよかったのだと思う。

呉さんには、研究者としてというよりかはむしろ、教育者ないし啓蒙家としての優れた力量を感じる。

教育者として、彼は優れた評論家を多く輩出した。

啓蒙家として、彼は『つぎはぎ仏教入門』などの優れた入門書を数多く著してきた。

これらふたつの素質は、相通じるものなのだ。

 

本著をきっかけに儒教に関心を持った読者の方は、その時点でもう「呉一門」の仲間入りである。

 

現代人の論語 (ちくま文庫)

現代人の論語 (ちくま文庫)