Furusawa Keisuke's blog

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書評『世界ファシスト列伝』

ファシズム」と聞くと、私たちはどうしても、枢軸国ドイツとイタリアばかりを思い浮かべてしまう。

ところがどっこい。1930年代の世界において、ファシズムは“流行の最先端”だったのである。

世界中で、ファシスト政党がまるで雨後の筍のごとく、ニョキニョキと現れたのだ。

本著『世界ファシスト列伝』中央公論新社は、当時の世界のファシスト政党たちを取り上げた、一風変わった著作である。

 

本著を読んでいると、本当に世界のいたるところにファシスト政党が存在していたことに驚かされる。

ドイツ、イタリアは言うまでもなく、フランス、オランダ、ベルギーなどの西欧諸国、オーストリアハンガリーなどの東欧諸国、北欧諸国、イベリア半島諸国、さらには永世中立国のスイスにすら、ファシスト政党は存在したのだ。

ヨーロッパだけではない。南米にもファシスト政党は多数あった。

たとえば、アルゼンチンの大統領にもなったフアン・ペロンーあるいは「あのエビータの旦那」と言ったほうが分かりやすいかもしれないーは「左翼ファシスト」という、いささか特異なポジションを築いたことで知られている。

南米はまた、第二次大戦後、ナチスの残党の逃亡先としての役割も果たした。その際、彼ら南米のファシストたちが裏で暗躍し、ナチ逃亡の手助けをしていたのだという。

一般にはファシズムから縁遠いと思われがちなアングロサクソン諸国においてすら、ファシストたちは存在した。

あの大西洋横断飛行を成し遂げた空の英雄・リンドバーグまでも、晩年はナチスを擁護する発言をして世の非難を浴びたというから驚きだ。

 

本著では、政党だけでなく、個々のファシスト活動家たちの生涯についても、かなり詳細にわたって記述されている。

だがその末路は、たいていの場合、悲惨なものだ。多くは第二次大戦終結後、連合国軍に捕らえられ、「194X年、〇〇の収容所にて処刑された」でオシマイである。

やはりファシストたるもの、畳の上で死ぬのは、なかなかに難しいようである。

 

さて、これほど多くのファシスト政党・国家が登場するというのに、また世間一般ではファシズム国家に分類されることも多いというのに、本著において、まったくと言っていいほど登場しない国が、ひとつだけある。

日本である。

せいぜい、ロシア人ファシストを取り上げた章のなかで、彼らを支援する勢力として日本が登場するにとどまっている。

明らかに、意図的な構成だろう。

日本のいわゆる「天皇ファシズム」のごときは、ファシズムと呼ぶに値しないということか。

 

……これは全くの余談だが、本著5頁に掲載されている、若き日のムッソリーニの肖像写真が意外にもイケメンであることに驚かされた(←なんだそりゃ

 

世界ファシスト列伝 (中公新書クラレ)

世界ファシスト列伝 (中公新書クラレ)