Furusawa Keisuke's blog

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書評『平成大停滞と昭和恐慌』

平成に入ってからというもの、かつての経済大国・日本は長期にわたる経済停滞に苦しめられている。

これは一般に「失われた20年」と呼ばれている。あるいは「失われた30年」になるかもしれない。

 

本著は、平成に入ってからの日本の経済停滞を、戦前の昭和恐慌と比較しながら分析した著作である。

著者は、リフレ派の論客として知られる経済学者の田中秀臣さんと経済評論家の安達誠司さん。共著である。

「リフレ派」とは、リフレーション(人為的に引き起こされる緩やかなインフレ)によって経済状況の改善を目指す人々の総称である。

 

本著を読んでいてとても勉強になったのが、「構造改革」と「構造改革主義」の違い。

構造改革とは、≪資源配分の効率化を通じて、経済の潜在成長率の上昇に寄与する≫(38頁)ことである。では、それと区別される意味での構造改革「主義」とは、何ぞ。

ここからは僕の理解なので誤解があったら申し訳ないのだが、構造改革主義とは「リフレか、構造改革か」と二者択一で考える発想のことである。この考えでは、どちらかを選べば、もう片方は犠牲にしなければならない。

しかし田中さんたちは、「いや、リフレと構造改革はべつに矛盾しないでしょ。両方一緒に進めればいいじゃん!」と主張しているのだ。

彼らはこのように構造改革「主義」を批判している。すると、彼らは構造改革そのものまでも批判しているのだと誤解されてしまう。だが、実はそうではないのだ。

この点は、とても勉強になった。

 

本著で個人的に最も興味をそそられたのは、戦前日本と戦後日本が一種「パラレル・ライフ」の関係にある、という指摘である。

パラレル・ライフとは、≪生きていた時代や場所が異なるまったく見ず知らずの二人が実はまったく同じ人生を歩んでいたというもの≫(113頁)である。本著ではケネディ大統領とリンカーン大統領の例が引き合いに出されるが、これがなんと人間だけでなく、国家レベルでも当てはまるという。

戦前日本と戦後日本、それぞれの歩みは、実はかなりの程度、平仄が合っているのだ。

昭和恐慌によるデフレは、当時の浜口雄幸首相や井上準之助蔵相による(今風に言えば)痛みを伴う改革」によって引き起こされたものであった。そしてそのデフレは、高橋是清蔵相によるリフレ政策によって克服されたのである。

いうまでもなく戦前日本は敗戦によってクラッシュし、日本はゼロからの再出発を余儀なくされた。そうして生まれかわった戦後日本は未曾有の高度経済成長を成し遂げ、日本は経済大国へとのし上がった。

さて、パラレル・ライフの関係が今後も続くのであれば、戦後日本はこれから先、一体どうなるのだろうか。

 

平成大停滞と昭和恐慌~プラクティカル経済学入門 (NHKブックス)

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