Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『北一輝の革命』

「戦前右翼の大物」といえば、頭山満(1855‐1944)、そして北一輝(1883‐1937)である。

戦前右翼について勉強したいなら、まずは北から始めるとよい。それほどの大物である。

では、まずはどの本から手に取ればよいのだろう。

 

初学者には、本著を薦めたい。

北一輝の革命 天皇の国家と対決し「日本改造」を謀った男』現代書館だ。

著者は、評論家の松本健一さん(1946‐2014)。戦前右翼に関する著作を多く出していることで知られる。

本著は、現代書館の『FOR BEGINNERS』シリーズの一環であり、その名の通り初学者向け(for beginners)に要領よくまとめられていて、感心させられる。

 

本著は、北一輝の生涯のアウトラインを描いていく。

すなわち、佐渡に生まれ、青年時代に大著『国体論および純正社会主義』を著し、その後中国にわたって革命勢力と行動を共にし、大川周明(1886‐1957)の勧めで日本に戻って『日本改造法案大綱』を著し、晩年は皇道派青年将校らと交流を持ち、2.26事件の思想的指導者となって、ついには処刑される、というものである。

僕は北一輝についてはいくらかの知識を持ってはいたが、本著を読んで新しく知った箇所がいくつかあり、勉強になった。

 

例えば、北の生まれ故郷・佐渡について。

こう言っては佐渡の人たちには申し訳ないが、「佐渡=流刑地」というイメージがどうしてもあるため、僻地という印象がぬぐえなかった。だが実際は必ずしもそうではなかったらしい。

昔から船便を通じて、佐渡は上方(関西)と交流があったのだ。

また、金山があったため、江戸から役人が多く派遣されており、彼らの子弟のための教育機関も充実していたのだという。

日本海に浮かぶ小さな島のわりには、文化の香りの漂う土地だったのだ。そしてそこで、北少年は育ったのである。

 

もうひとつ面白かったのが、日記。

北一輝には霊感があった。彼は数々の心霊現象を体験しており、それをまとめた『霊告日記』なる日記も残されている。たとえば「○月×日。今日は△△さんの霊と話をした」とかいった具合に。

もちろん霊感のある北のこと、実際に霊と喋ったこともあるのだろうが、そうでないこともあったようだ。

つまり、政治的理由により表に出せない会談を、「霊との対談」ーというとナントカの科学みたいだなーという形でカモフラージュして『霊告日記』に残していたのである。

本著では、2・26事件直前、北が青年将校とのやり取りを霊との交信という形で日記に書き残していたことが、例として挙げられている。

なるほど! と目からうろこが落ちた。

 

本著は分かりやすいが、それでもあくまで「FOR BEGINNERS」(初心者向け)に過ぎない。

本著を読んで北一輝に更なる興味を持った方は、松本健一さんによる大著『評伝 北一輝岩波書店を読むと良いだろう。

 

北一輝の革命―天皇の国家と対決し「日本改造」を謀った男 (FOR BEGINNERSシリーズ)

北一輝の革命―天皇の国家と対決し「日本改造」を謀った男 (FOR BEGINNERSシリーズ)