Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第180回)

・『伴奏者』

第二次大戦中のパリ。主人公の若い女性が、ソプラノ歌手の伴奏者を務めることになる。

歌手とその夫とともに欧州各地を転々とするなか、主人公は滞在先のロンドンにて、歌手が若いイケメンと不倫していることに気づいてしまう…

本作にBGMはない。暗めの映像で、主人公と歌手、その夫、不倫相手との関係性をしっとりと描く。

いかにもヨーロッパ映画らしいヨーロッパ映画で、僕は見ていてとても感銘を受けた。

 

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・『フィニアンの虹』

アメリカ映画を見ていると、1960年代の公民権運動はやはりデカかったのだなぁ、と痛感させられる。

それ以前の映画では、黒人はせいぜいお手伝いさんなどの役で出演する程度だが、60年代からそうした状況が変化していき、70年代にもなると普通に黒人が一般市民役で登場するようになるのだ。

本作は、1968年公開。フレッド・アステア主演のファンタジー・ミュージカル映画だが、同時に政治色の強い作品ともなっている。

舞台となるのは、白人も黒人も仲良く暮らす、ある村。ところがここにはひとり、レイシストの悪徳政治家がいた。

彼は、主人公が持ちこんだ魔法の壺の力によって、黒人の姿へと変えられる。

かくして肌の色が変わったレイシスト政治家は、ゴスペルなど黒人社会の魅力に触れるうち、それまでの態度を改めていくのである。

主演のアステアは、本作公開時69歳。すっかりシワシワの爺さんになってしまっていて、彼の若い頃の映画から見ている僕にとっては、なんとも寂しかった。

 

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・『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』

ここのところ、アメリカのミュージカル映画ばかり見てきたものだから、そろそろ日本映画が恋しくなってきた。

というわけで、次にご紹介するのは、言わずと知れた日本の良心・寅さんである。

本作『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』は、我らが寅さんがなんと音楽の都・ウィーン(!)へ旅立っちゃうよという、『寅さん』シリーズのなかではやや異色の作品だ。『心の旅路』というサブタイトルはやはり、同名のアメリカ映画から拝借したものだろう。

『寅さん』シリーズといえば、マドンナである。

本作のマドンナは、竹下景子。日本の企業風土、とりわけその女性差別的な体質になじめず、単身ウィーンへと渡ったという設定だ。例によってヒロインは寅さんに惹かれるが…

今日でもそうであるが本作公開当時(1989年)はなおのこと、「日本人=会社人間」であった。なにからなにまで会社にがんじがらめにされている日本人にとって、そんなしがらみのない自由な寅さんは、憧れの的であった。

一般に、人々から好まれるキャラクターは、その人々と似ているか、まったくそうでないかのどちらかである。

寅さんは後者。ほとんどの日本人が彼のようには生きられないからこそ、日本人は彼に強い愛着を示したのだ。

本作ラストでは、なんとあの『ラブライブ!サンシャイン!!』でおなじみ、静岡県沼津市の内浦がロケ地として登場する。ラブライバーは要注目!

 

 

・『禅 ZEN』

最近、曹洞宗に関心を持っている。

次にご紹介するのは、曹洞宗の開祖・道元禅師の生涯を描いた伝記映画だ。

冒頭からして良い。幼くして母を亡くした道元少年は、当時流行していた浄土思想に反発、この世こそが浄土でなければならぬと考え、出家して宋に修行の旅に出る。

主演は、歌舞伎役者の中村勘九郎道元の晩年を描く終盤になるにつれて、次第に声がドスの効いたものになっていく。さすがは、歌舞伎役者。

道元の中国留学の場面では、実際に中国語でセリフを流暢にしゃべっており、なかなかの役者魂である。

…まぁぶっちゃけ、映画としての完成度はお世辞にも高いとはいいがたいのだが――だってCGを使った演出がことごとく陳腐なんだもんw――伝記映画としてはよくまとまっており、道元入門としては最適の作品と言っていいだろう。

あ、ヒロインの内田有紀が可愛かったです♪

 

禅 ZEN [DVD]

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・『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』

脳筋という言葉をご存知か。

「脳みそが筋肉」の略語であり、全身の筋肉をすこぶる鍛えているわりには、肝心の頭脳のほうはサッパリ…という筋肉バカを揶揄したネットスラングである。

本作は、そんな脳筋三人組による後先考えない「史上最低の一攫千金」を描いた犯罪映画。驚くべきことに実話である!

筋トレだけが生きがいの主人公。自らの所得、社会的地位にまったく満足していない。一攫千金を夢見た彼は、同じく脳筋の仲間たちを誘い、ある富豪を誘拐するという計画を立案、実行に移すが…

まぁ、そこはしょせん脳筋である。たとえば、誘拐した富豪を交通事故を装って殺害しようとするが…

富豪は車内に装備されたエアバッグと、ご丁寧に主人公の相棒が着けてくれたシートベルトのおかげで事なきを得る。

「なんでシートベルトなんか着けるんだ!」と怒鳴る主人公に対し、相棒曰く

「だって着けないと法律違反になるし…」

一事が万事、こんな具合である。

それでも、本事件の捜査や裁判は意外と難航したようだ。

無理もない。警察・司法は、犯人がある程度合理的にふるまうことを想定して動くので、非合理的な犯人が非合理的なふるまいをすることを想定していないのだ。

脳筋、おそるべし…。

本作の舞台・フロリダのなんとも刹那的、退廃的、物質主義的な雰囲気が強く印象に残る。こういう末法の世こそ、道元禅師の出番ですなっ