Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『関西赤貧古本道』

今からちょうど10年前の話。

僕は、現在住んでいる西荻窪のアパートへと引っ越してきた。それからしばらくは、お隣の吉祥寺に行って、古本屋めぐりをするのが日課となった。

古本屋を歩いて回るだけで、楽しかった。なにか面白そうな本を見つけて購入すると、もっと楽しかった。

吉祥寺だけではない。中央線沿線には、よさげな古本屋がたくさんあった。電車でさらに足をのばせば、神保町にだって行ける。

古本屋めぐりは、僕にとってはなによりの娯楽であった。

 

そういう人は、案外多いものらしい。

本日ご紹介する『関西赤貧古本道』(新潮社)もまた、古本が好きすぎて好きすぎてしょうがないという、少々困った人大の古本マニア・山本善行さんによる著作である。

 

山本さんの古本好きはもはや、ほとんどビョーキとすら言ってよい(;^ω^)

≪長い間探していた『昔野』を目録で発見したときは思わず座り直した。それに千五百円と値が付けられているのを見たときから電話で注文できたときまでは興奮状態ではっきり覚えていない。丁度そばに子供たちがいたのだが、子供たちによると、そのとき私は何やらわけのわからない声を発したということだ。注文できたあと、子どもたちの手をとって踊りまわったのは覚えている。≫(118頁)

≪例えば、電車に乗って何気なくぼんやりと、窓の外を流れる景色を見ていると、看板に「古」という一字が見えたりすることがある。この近くに古本屋があったのかと思い、私はそれだけで、どきっとして、しゃきっとして、立ち上がったりするのである。そのあと、よく見ると「古鉄買います」とか「古本(ふるもと)不動産」だったりするので、また座席にぐったりすることになるのだが……。≫(123頁)

「古」の字で脊髄反射的に反応してしまうという山本さん、きっと僕の名字を見ても同様に、どきっとして、しゃきっとして、それからぐったりしてしまうに違いない(;^ω^)

 

山本さん曰く、古本の値段は100円くらいが一番いい、とのこと。予算はあえて少なめの、5000円程度にとどめておくほうが良いともいう。

予算が少ないほうが、いわゆる大人買いをせず、ちゃんと内容を吟味して本を買うようになるからだというのが、その理由である。うんうん、分かる(w

 

山本さんの前には、ときにライバルたちが立ちはだかる。本著では、山本さんとそのライバル、すなわち他の古本マニアたちとの“死闘”の様子も書かれており、笑ってしまう。

いや、当人はいたって大真面目なのだろうけど(w)、傍目から見るとどうしても、笑えてしまうのだ。

 

本著で山本さんが購入していく本のタイトルを見てみると、どうやら山本さん、文学がお好きのようだ。

僕はというと、正直、文学にはあまり興味がない。僕は昔から、社会科学系の本が好きなのだ。

同じ本好きとはいっても、具体的にはこういうかたちで、趣味の違いがあらわれるものなのだろう。

 

さて、ここで気になるのは、「山本さんって、いったい何のお仕事をされている人なんだろう?」ということ。

無理もない。本著を読んでいると、山本さんは本当に毎日毎日古本屋をのぞいてばかりいる。ところが普通に妻子がいるというのだから、一体この人の収入源は何なのだろう、と気になってしまう。

答えは、ちゃんと本著のなかにあった。

≪大学は出たけれど、本が読みたいし古本屋に入り浸りたい。呑気な話だけれど、就職しないで家を出て独り暮し、お金が無くなればアルバイトをした。そのうち友人が学習塾を手伝わないかと誘ってくれたのだ。教えるのは嫌いではなかったし、家庭教師の経験もあったので、やってみることにした。何といっても、夕方からの仕事なので、昼間、好きなだけ古本屋を廻れるし、本も読めるのが、一番の魅力だった。≫(113頁)

というわけで、塾の先生なのであった。あぁ、納得。

 

『関西赤貧古本道』というタイトルからも分かるとおり、山本さんは、関西の人である。

たまに、上京するようだ。本著後半では「東京大遠征」と題し、山本さんが東京の古本屋を見て回った際のエピソードが載せられている。

このときは、中央線沿線・荻窪の古本屋で本を買いまくったのだという。

荻窪といえば、僕のアパートの近所ではないか!

よしっ、本著で名前が挙げられている荻窪の古本屋に、今度行ってみるとしよう。

そして、山本さんと同じように、ジャズ喫茶に行き、そこで買ったばかりの古本を読むとしよう。

 

あるいは、10年ぶりに吉祥寺の古本屋を歩いて回るのも、良いかもしれない。

 

関西赤貧古本道 (新潮新書)

関西赤貧古本道 (新潮新書)