Furusawa Keisuke's blog

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書評『嘘だらけの日英近現代史』

憲政史家・倉山満さんの著作は、本ブログでもしばしば取り上げている。

本日ご紹介するのは、倉山さんの『嘘だらけの日英近現代史(扶桑社)だ。

 

タイトルからもお分かりいただけるように、本著で取り上げられるのは、英国の歴史。

古代中世は駆け足気味に、議会政治が本格化する近世からは本格的に、英国の歩みを解説していく。

といっても、“日”英と銘打っているくらいだから、終盤から日本の近現代史と絡めてくるところが、本著のポイントである。

 

本著は一般の人々向けに、分かりやすく、かつ“面白おかしい”記述を心掛けているようで、倉山さんの筆致にはいちいち笑わせられる。

たとえば、こんな具合に。

≪今でもイギリス貴族は英語の発音で瞬時に相手の階級を見抜くと言われます。もちろん、それでランク付け(つまり差別)をするわけですが。日本の関西地方では、「京都>神戸>大阪>そのほか兵庫>奈良>和歌山」のヒエラルキーがあり、京都人は関西弁の発音で即座に相手の出身地(つまり階級)を見抜きランク付けするようなものと考えてください。≫(37‐38頁)

 

倉山さんのこうした“話術”に触れていると、やはりどうしても、社会学者・小室直樹さん(1932-2010)の影がちらついてしまう。

小室さんもまた、社会科学を一般の読者向けに、分かりやすくかつ面白おかしく語ることのできる天才であった。

倉山さんは小室さんからかなり大きな影響を受けたようだから、本作の文体もおそらくは意図したものなのだろう。

 

実を言うと、倉山さんの著作には本著のほかに、『嘘だらけの日露近現代史』『嘘だらけの日米近現代史』などがあり、これらはまとめて『嘘だらけシリーズ』と呼ばれているそうである。

僕が思うに、倉山さんはこの『嘘だらけシリーズ』を、小室さんの代表作である『原論シリーズ』に相当する名シリーズへと育てたいのではあるまいか。

 

もっとも、これは倉山さんに限った話ではないのだが、小室さんのようなひと昔前の論客が得意としていた「落語家のような語り」ができる書き手が、最近はめっきり減ってしまったように思えてならない。

1970年代以降の生まれの、今どきの論客が一般人向けの入門書を書こうとするとどうしても、「オタク男子が自らの得意分野を嬉々として早口でまくしたてている」感じが否めないのである――それが悪いというわけではない

物書きに限らず、今日の日本社会では、1950年代までの生まれが(言っちゃ悪いが)「ひと昔前の日本人」、1960年代生まれが過渡期、そして1970年代以降の生まれが「今どきの日本人」といった具合に、世代間の断絶があるような気がする。

 

……おっといけない、話がずいぶんとそれてしまった。英国に戻そう(w

メディアの報じるところによれば、日本と英国は空対空ミサイルを共同開発することで合意したのだそうである。

 

www.sankei.com

日英同盟の復活も、案外近いのかもしれない。

 

嘘だらけの日英近現代史 (扶桑社新書)

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