Furusawa Keisuke's blog

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書評『「軍国主義」が日本を救う』

ここのところ、憲政史家の倉山満さんの著作をやや集中的に取り上げている。

今回ご紹介するのは、倉山さんの『「軍国主義」が日本を救う』徳間書店

 

……えっ!? ぐ、ぐぐ軍国主義が、日本を救うぅ~!?

これまたずいぶんと挑発的なタイトルであるが(;^ω^)、もちろんこれは意図的なものだ。

倉山さん曰く、「軍事を国策の最優先事項とする」のが軍国主義である。日本はこのような意味での「軍国主義」を目指すべきだという。

軍国主義」という言葉には、しかしながらどうしても暗いイメージがつきまとう。これについて倉山さんは、本著巻末にて以下のように述べている。

≪本書はあえて、特定の世代の人々が忌み嫌い、今の若い世代からも何となく「悪いもの」と思われている「軍国主義」を題名にしました。

 敗戦後七十年もの間、日本の言論空間ではレッテル貼りが横行してきたからです。  ならば、そのレッテル貼りを受けて立ってやろう!≫(293頁)

倉山さんは、レッテル貼りを無効化するために、あえて「軍国主義」という不人気な言葉を本著のタイトルに据えたのだ。

 

本著で主に倉山さんの批判の対象となっているのは、自衛隊や保守派の評論家たちである。

「え、どうして? 批判されるのはサヨクじゃないの?」

と不思議に思われるかもしれない。

倉山さんはもちろん保守の人だが、保守“だからこそあえて”同じ保守派や自衛隊に対し、厳しい態度で臨んでいるのである。

※この点、イスラーム法学者でありながら、否、であるがゆえにイスラーム諸国に手厳しい中田考さんのスタンスを連想させる。

 

本著前半では、現在の日本の情けなさすぎる安全保障の現場や従来の議論が俎上に載せられ、後半では自衛隊を悩ませている予算不足について語られる。

第四章のタイトルがスゴい。

「こんなに弱いぞ! 自衛隊である。

保守系の論壇誌では「こんなに強いぞ! 自衛隊」みたいな勇ましい特集がよく組まれるが、ここで倉山さんはそれをもじっているのだ。

もちろん倉山さんは“自虐史観”に立っているのではない。繰り返しになるが、自衛隊にもっと強くなってほしい、今のままではダメだ、と強く思っているからこそ、あえて苦言を呈しているのである。

 

以前にも書いた記憶があるが、倉山さんの評論家としての一番の持ち味は、20年間この国を苦しめ続けてきたデフレに対し、厳しい姿勢で臨んでいることである。

反対に、日本の保守のダメなところは、予算がまるで打ち出の小槌のようにポンポンと出てくるものと思っているところだ。

もちろん、現実にはそんなことはありえない。

軍事について語る前に、まずは経済から話を始めなければならないのだ。

日本経済を苦しめているのは、長期化したデフレである。日本を強くするためには軍事力が必要で、軍事力増強のためには経済の立て直しが必要で、そのためにはデフレから脱却する必要がある……と、こういう理屈なのである。

倉山さんは、デフレからの一日も早い脱却を訴えると同時に、これまでデフレ脱却の機会をつぶし、この国にデフレを定着させてきた日銀の白川方明元総裁や、財務省の木下康司・元財務事務次官をことあるごとに痛罵している。

 

 

さて、ここから先は余談になってしまうのだが、倉山さんにはもうすこしファシズムの話をしてほしかったな、と個人的にはちょっとばかり不満に思っている。(;^_^A

先日投稿した『嘘だらけの日露近現代史』の書評では触れるのをうっかり忘れてしまったが、この本のなかで倉山さんは、ソ連のことをファシズム国家と呼んでいた。

倉山さんによれば、「国家の上に党が君臨する体制がファシズムなのだそうで、ソ連もその定義に当てはまるからファシズム国家なのだという。

とはいえ、左翼の総本山たるソ連ファシズム国家というのは、やはり違和感が残ってしまう。

本著はタイトルに「軍国主義」が入っているくらいだから、もうちょっとファシズムについても触れられているのかな、と思ったらそうではなくて、その点がすこし心残りであった。

……あ、こうやってあえて苦言を呈しているのも倉山さんを応援しているからなのですよ(w

 

「軍国主義」が日本を救う (一般書)

「軍国主義」が日本を救う (一般書)