Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第201回)

・『狂へる悪魔』

二重人格を題材にした有名な小説『ジキル博士とハイド氏』を映像化したサイレント映画である。1920年公開。

主人公のジキル博士は誰からも好かれる好青年であったが、ある薬を作り、服用したことから、狂暴な第二人格「ハイド」へと変貌してしまう。

ジキル/ハイドの一人二役(?)を演じるジョン・バリモアの演技がものすごい。はっきり言ってしまえばオーバーアクションなのだが、それが許されるのも本作がモノクロのサイレント映画だからだろうか。

おとなしいジキルから狂暴なハイドへ。とても同じ役者さんとは思えぬ変貌ぶり。ぜひ皆さんも「古い映画だから……」などと思わず、本作を見てほしい。

 

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・『黒いジャガー

黒人の私立探偵・シャフトが、ときに手荒なアクションもやりながら、事件を解決するという刑事モノの映画である。

1960年代以前のアメリカ映画では、黒人は白人家庭のお手伝いさんの役くらいでしか登場することがないが、60年代の公民権運動の高揚を境にそれが変化、70年代以降のアメリカ映画ではごく普通に黒人が一般市民の役で多数登場するようになる。

1971年に公開された本作は、まさにそんな大きな変化のさなかに制作された映画なのだ。

主人公の黒人探偵は、貧乏であるし、ときにタクシーに乗れなかったりする(これは黒人へのよくある嫌がらせである)。それでも卑屈さは微塵も感じさせない。白人女と普通にセックスもする。

そんな彼が中盤で出会うのが、黒人解放グループの過激派のメンバーたちだ。彼らのアジトには、黒人解放運動の指導者・マルコムXの肖像写真が掲げられている。主人公は彼らの助けを受けて、街の乗っ取りをたくらむマフィアたちと対決する。

本作は、ただのハードボイルド刑事ドラマではない。ブラック・パワーがみなぎる、黒人映画である。

 

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・『エミリー・ローズ

1970年代のドイツで実際に起こった悪魔憑き事件に材を取った、アメリカ映画である。

平凡な女子大学生エミリー・ローズが原因不明の狂気に陥ってしまう。これを悪魔の仕業と判断した神父が懸命に悪魔祓いを行うが、その甲斐なく彼女は死亡する。その後の捜査により、神父は彼女の死に責任を負っているとみなされ、逮捕されてしまう。

神父を弁護すべく、担当の女性弁護士は、そもそも「悪魔憑き」なる非合理を認めようとしない近代司法制度そのものに、戦いを挑む。

……という筋書きであるから、本作は単に『エクソシスト』的なホラー作品であるだけでなく、法廷ドラマでもあるのだ。

とはいえ、本作の目玉はやっぱり、ホラーシーンだろう。とりわけ、悪魔に憑かれたエミリー・ローズを演じるジェニファー・カーペンターの熱演がものすごくて圧倒されてしまう。

悪魔があらわれる時刻が午前3時、というのも面白い。3は三位一体を重んじるキリスト教にとって重要な数字であるから、とか、キリストが処刑されたのが午後3時であって、その正反対の時刻であるから、とかいった理由づけがなされるが、要は「人が最も寝静まった時間帯だから」だろう。わが国の「草木も眠る丑三つ時」にも通じる発想だ。

「神のことは人には裁けない」というラストの神父の言葉が、印象に残る。

  

 

・『デッドマン・ウォーキング

タイトルを見たときはてっきりゾンビ映画かと思ったが(w)、全然そんなことはなく、むしろ極めて真面目な社会派映画であった。

スーザン・サランドン演じる主人公のシスターが、ある死刑囚の心のケアを任される。

この死刑囚、凶悪殺人犯であるうえに、メディアの前で公然とナチズムを礼賛する始末。そんな彼と関わっているため、主人公は被害者遺族から罵声を浴びせられ、自らの家族との間にも溝ができてしまう。

それでも熱心に死刑囚と向き合う主人公。それが功を奏したのか、死刑執行直前になって死刑囚はようやく人間らしい感情を見せる。が、処刑は目前に迫っていた……。

薬物注射による死刑執行はわが国では行われていないため、薬物による死刑の場面は(不謹慎ながら)非常に興味深い。

こういう処刑のシーンではどうしても死刑囚に情がうつってしまうものだが、本作は処刑シーンの合間に被害者の殺害シーンも挿入しており、観客が単純に死刑囚への憐憫の情から死刑廃止論に傾かないよう、綿密に作られている。極めてニュートラルな映画だ。

 

さて、日本で先日(12月19日)死刑が執行されたことに対し、独仏の大使館がtwitter上にて抗議し、話題になっている。

個々人が死刑に反対するのは別に構わない。が、国家が他の主権国家での死刑執行に口を出すというのは、やはり内政干渉ではないのか。

本作を見れば分かるように、死刑の是非というのは、簡単に答えが出るものではないのだ。

 

 

・『死にゆく妻との旅路

1999年に実際に起こった事件を題材にした日本映画である(今回はこのテの作品が多いな……)

職を失い、借金だけを抱えた三浦友和演じる主人公が、病気がちの妻とともにワゴンカーで日本全国を旅してまわる。決して物見遊山などではなく職探しの旅であったが、ふたりは案外楽しそうだ。だがその間にも妻の身体は着実に病魔に侵されつつあった。

「死にオチ」映画にありがちな悲壮感はあまりなく、ロードムービーとしての性格が強い一作だ。映し出される全国津々浦々の観光地といい、全編にわたって描かれる四季の移り変わりといい、実に美しい。

妻がまるで深夜アニメの病弱ヒロインのような性格で、「こんな女、リアルでいるかよ!」とついツッコみを入れてしまったが、いたからこうして映画になったんだよなぁ……。

 

死にゆく妻との旅路

死にゆく妻との旅路