Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『天使の世界』

本日ご紹介する本は、『天使の世界』青土社

キリスト教世界において、時代を問わず、多くの人々のイマジネーションを刺激してきた、天使なる存在をテーマとした本だ。著者は、マルコム・ゴドウィン。日本語訳を担当したのは、翻訳家の大瀧啓裕さんだ。大瀧さんは、これまで神秘思想関連の書籍を多く翻訳してきたことで知られている。

 

さて、現代人である我々は「天使」と聞くと、背中に羽の生えた小さな子供、という印象を持ってしまう――ルネサンス絵画の影響だろう。ところが、古代・中世において天使は、子供ではなく中性的な成人の姿で描かれるのが普通であり、もっとスゴイ場合にはそもそも人間の形態をとらない、すなわち人外の天使すらいたのだという。

本著はカラー印刷で図版も非常に充実しており、古代・中世における天使の絵画を多数見ることができる。なるほど、確かに人外の天使もいるなぁ(^▽^;)

 

本著を読んでいると、人類のイマジネーションの豊かさに、圧倒されてしまう。

ある意味、古代人は幸せだったのだ。彼らは、まるでファンタジーのようにロマンあふれる世界のなかで、生きることができた。

その点、近代人は不幸だ。科学のせいで、このクソ退屈な世界で生きることを余儀なくされてしまった(※)。その退屈さを紛らわすべく、我々はアニメやらライトノベルやらを日々量産しつづけているのだろう。

※だってそうだろう? 「この世界は100種以上もの元素によって構成されており……」という説明よりも「この世界は火、水、土、空気の四大元素によって構成されており……」という“説明”のほうがはるかに我々の中二病精神を刺激するではないか!(w

 

本著著者のゴドウィンさん、てっきり根暗のオカルトマニアなのかと思いきや(失敬!)、なかなかどうして、ユーモアがある。皮肉が効いていて、クスリとさせられる記述も多い。例えばこんな感じに。

 ≪ルターの全人生は絶えざる「サタン相手の闘い」であった。その闘いがはなはだしいものだったので、ルターは妻のケイティよりも悪魔とよく寝たといわれる。≫(113頁)

 

さて、本著はなかなかに、トリッキーな本だ。

前半では天使について詳細に解説がなされるのに、後半に入るや一転、唐突にUFOや宇宙人の話になってしまうのであるw(;^_^A

これには「え、何コレ? 天使の本じゃなかったの?wwwwwwww」と面食らってしまう。さてはゴドウィン、ただのオカルトマニアだったのか。

……もちろん、そうではないだろう。僕には彼の言いたかっただろうことが、なんとなく分かる気がする。

我々現代人はつい「古代人は天使なんて信じてたの?www」と嗤ってしまう。だがそれを言うなら、我々のなかにだってUFOを信じている者は大勢いるではないか。

「ふん、俺はそんなもん、信じてなんかいないやい!」と反発する人もいるかもしれないが、それを言うなら古代人とて、全員が全員、天使を信じていたわけではないだろう。「……ぶっちゃけ、天使って、どうなの?」と訝しく思っていた古代人だって、きっといたはずである。

要するに、UFOを信じる現代人に、天使を信じる古代人を嗤う資格はない、と著者は言いたかったのだ。……たぶん(w

 

天使の世界

天使の世界

 

 

この本もオススメ! BOOK GUIDE

・『エヴァンゲリオンの夢 使徒進化論の幻影』東京創元社

『天使の世界』の翻訳を担当した大瀧啓裕さんによる単著。タイトルからも分かるとおり、難解なことで有名なアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を、神秘思想に精通している大瀧さんが一話一話解説していく、という内容の著作である。

エヴァブーム当時、サブカルライターたちによる「謎解き本」が大量に刊行されたが、本著が他の追随を許さないのは、なんといっても、大瀧さんの博識ぶり。これには圧倒されること請け合いだ。

……何を隠そう、僕の高校時代の愛読書でもある(w

 

エヴァンゲリオンの夢―使徒進化論の幻影

エヴァンゲリオンの夢―使徒進化論の幻影