Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第214回)

・『けんかえれじい

タイトルのとおり、ケンカがめっぽう強い若き主人公が、全国の旧制中学校を転々としつつ、現地のバンカラ学生たちとケンカに明け暮れるという青春映画である。

監督は、日本のカルト映画の巨匠・鈴木清順。いかにも彼らしい、人を食ったようなシュールな演出が見どころだ。

若き主人公を演じるのは、高橋英樹。本作公開当時、まだ22歳であった。なんとも瑞々しい!

さて本作は、しかしながらただの青春ヤンキー映画ではない。

終盤、ある雪の降る晩に、兵隊たちが行軍していく。翌朝、クーデターが発生し、時の首相・岡田啓介が暗殺された――周知のとおり、これは誤報であった――との衝撃的なニュースが報じられる。

世にいう、2.26事件だ。

その「思想的首謀者」とされたのが右翼思想家の北一輝であるが、主人公は新聞に掲載された彼の顔写真を見て、どういうわけだか見覚えがあることに気がつく。

なんと、彼はとあるカフェにて、この北一輝本人に一度会っていたのだ!

「もっと大きな喧嘩をしてみないか」という北の言葉に触発された主人公は、かくして東京行きの列車へと飛び乗ったのであった。

 

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・『戒厳令

さきほどの『けんかえれじい』が2.26事件を暗示的に描いた作品だとするなら、こちらは“明示的に”描いた作品と言えるだろう。

本作は、2.26事件における「思想的首謀者」、北一輝を描いた映画である。

監督は、吉田喜重。明暗のコントラストが強調されたモノクロの映像が、なんとも美しい。本作は、1973年の公開である。当時はすでにカラーフィルムのほうが一般的であったはずだから、吉田監督はあえてモノクロフィルムを選択した、ということになる――このように、カラー時代にあえてモノクロフィルムで撮影された映画は、ほぼ間違いなく名画である

それにつけても圧倒されるのが、主演・三國連太郎の迫真の演技だ。これは、本当に凄い。あぁ、熱演というのは、なるほどこういう演技のことを言うのか、と思った。

もっとも、いささか力が入りすぎているのでは……という気がしないでもない(;^ω^)。三國の演じる北は、神秘主義的な雰囲気が強すぎる、と感じるのだ。実際の北のほうが、もうちょっと気さくだったんじゃないかなぁ。会ったことないけど。

先日取り上げた『曼陀羅』同様、こちらもATGによる作品である――正確には、現代映画社とATGの提携作品

うーん、ATG、いいなぁ(w)。今度、ATG作品をまとめて鑑賞してみたい。

 

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・『サン・ジャックへの道

21世紀の今日になっても、人間は聖地への巡礼をもとめてやまない生き物である。

フランスとスペインの国境周辺にはキリスト教の聖地が数多く点在し、そこはいつも多くの巡礼客でにぎわっている。言うなれば「フランス版お遍路」とでもいったところか(w

本作は、そんな“お遍路”に向かう老若男女のお話。巡礼メンバーは、世代も性別もそして人種も、実に多様である。

みな都会暮らしだから、長期間歩くのには慣れていない。はじめのうちはすぐバテて文句ばかり言う。トラブルにつぐトラブル、その連続だ。

だがそれでも、長期間ずっと旅を続ければ、仲間意識が湧き、お互い助け合うようになるのだから不思議なものだ。

たとえば、メンバーのひとりであるアラブ系の少年は失読症で字が読めないが、これまたメンバーのひとりである高校教師の女性が根気強く読み書きを教えてくれたおかげで、少しずつ字が読めるようになるのである。

巡礼の最終地であるスペインの聖地に到着したころには、一行はすっかり家族のように仲睦まじくなっていた。

とても心温まる映画だ。それでいて、コミカルで笑える部分も多い。さらには多文化社会である現代フランスの一面も垣間見え――この点、以前取り上げた『パリ20区、僕たちのクラス』と似る――政治的な観点からも、実に興味深い。

 

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・『砦の29人』

タイトルのとおり、29人のガンマンが砦に入って先住民・アパッチ族と戦う、という内容の西部劇映画である。

戦闘シーンなどは、なかなかの迫力。

とはいえ、先住民の残酷性を強調するシーンばかりなのは、まぁ西部劇のサガとはいえ、なんとかならんものかと思ってしまう。

その点、本作で救いとなっているのがシドニー・ポワティエ演じる黒人のガンマンだろう。シドニー・ポワティエといえば、知的な役どころを多く演じ、従来の黒人のイメージを塗り替えた名優だ。本作でも、クールなガンマンを好演している。

 

 

・『日曜日が待ち遠しい!』

さて、今月のトリを飾るのはこちら。フランソワ・トリュフォー監督の遺作『日曜日が待ち遠しい!』である。1983年の作品であるが、先ほどの『戒厳令』と同様、あえてモノクロフィルムで撮影されている。

演劇をやりながら不動産事務所の秘書としても働いている、主人公の女性。ある日、彼女の上司が妻殺害の容疑で警察に逮捕されてしまう。この上司とひそかにデキていた(!)彼女は、彼の無実を証明すべく、素人探偵として事件の捜査に乗り出す。

トリュフォー監督はメンドクサ~イ女を描かせたら天下一品であったが、本作はコメディ色が強いためか、主人公の女はさほどメンドクサくない(w

全体的に、ほのぼのとした感じの作品に仕上がっている。大監督の遺作は、意外とこういうほのぼのとした映画が多いような気がする。黒澤明監督の遺作『まあだだよ』もやはり同様に、ほのぼのとした作品であった。