Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第217回)

・『日本のいちばん長い日』

岡本喜八監督の『日本のいちばん長い日』がリメイクされるらしい、と聞いたとき、正直、いや~な予感がした。

あぁ、どうせまた、皇居で銃撃戦が行われてるさなかに、兵隊さんが泣きながら戦争の悲惨さと命の尊さを訴える、みたいな感じになるんだろうなぁ、どうして最近の日本映画界は、かつての名作に泥を塗るようなクソリメイクばかり作ってしまうんだろう、と思っていた。

そんなわけで、なかなかリメイク版『日本のいちばん長い日』を見ようという気にはなれなかった。今回、ようやく重い腰を上げて、見てみることにした。

……なんだ、ただの神映画か。

いやはや、これなら旧作と見比べても決して引けを取らないぞ。いやむしろ旧作を超えている、とすら言っていいんじゃないか。

本作は、山崎努演じる鈴木貫太郎首相、役所広司演じる阿南惟幾陸相、そしてモックンこと本木雅弘演じる昭和天皇(!)の三人を通じて、終戦決定に至るまでの「日本のいちばん長い日」を描く。

監督は、原田眞人。僕は以前、彼の『狗神 INUGAMI』という映画を見て、そこに映し出された高知県の美しい自然に感動したことがある。付け加えれば、原田監督は僕と同じく、静岡県沼津市の出身である。

さて、原田版『日本のいちばん長い日』の一番の特徴は、上述のとおり、昭和天皇を詳細に描いている点だ。岡本喜八版のほうでは、おそらくは時代の制約ゆえに、昭和天皇はわずかにその声や後ろ姿が描かれるにとどまった。しかし本作では、昭和天皇は主人公格の登場人物として、堂々とスクリーンに現れるのだ。

これだけでも評価してよいが、さらに凄いのが本木雅弘の演技。喋り方が、かの有名な玉音放送のそれとよく似ている。いかにも学者らしく頭の回転が速いのだが、かといっていわゆる「論破厨」的なイキった印象はまったくない。天皇ゆえの圧倒的な育ちの良さが、滲み出ているからだ。

最も強く印象に残るのが、昭和天皇東条英機との、サザエの問答だ。

東条は、武装解除された日本を、殻のないサザエに喩える。このままでは人間(=連合国)に食われてしまう、だから武装解除などもってのほか、というわけだ。これに対し昭和天皇はまず、サザエにはラテン語の学名があることに触れて、それがすでに欧米人によって支配されている(=名づけられている)ことを暗示させ、続けて、連合国の首脳は(サザエを食べる風習がないので)サザエなど殻ごと捨ててしまうだろう、と告げる。

要するに、お前の喩えはナンセンスなんだよ東条、というわけだ(w)。恐縮した東条は「東条の喩えが不適切でございました!」と頭を下げる。以降、この映画に東条が登場(ダジャレじゃないよ)することはなくなる。

もちろん、役所広司の阿南陸相もいいし、山崎努の鈴木首相もいい。だが本作の主役はやはり、昭和天皇だろう。プレッシャーに耐えて本作のオファーを引き受けてくれた本木雅弘に、エールを送りたい。

 

日本のいちばん長い日
 

 

・『ピアニストを撃て

本ブログではもはやおなじみ、フランソワ・トリュフォー監督の作品である。

かつては一流のピアニストであったが、訳あって落ちぶれ、今は酒場でピアノを演奏している主人公。それなりに平穏な毎日ではあったが、そこにやくざ者の兄が流れ込んできたものだから、さぁ大変。トラブルに巻き込まれた結果、弟をギャングに拉致されてしまう。主人公は弟を救出すべく、ヒロインの女とともに雪山へと向かうが……

こう書くと、なにやらスリル満点のサスペンス映画を連想してしまうが、そこはトリュフォー監督(w)。実に遊び心満載の、オトナの娯楽映画へと仕上げている。たとえば登場人物のひとりが「おふくろの命にかけて誓う!」と言うやいなや、次の瞬間、彼の母親と思しき老女がバタリと倒れるシーンが挿入される、といった具合である(w

上映時間84分とやや短めの映画だけれど、ユーモアたっぷりのトリュフォー・ワールドをたっぷり堪能することができました。やっぱりフランス映画って、いいなぁ。

 

 

・『パワープレイ』

欧州某国にてクーデターが発生するさまを描いた、イギリスのサスペンス映画である。

主演は、『アラビアのロレンス』で高名な、イギリスを代表する俳優、ピーター・オトゥールだ。

もっとも、彼が銀幕の世界で華々しく活躍したのは、主に1960年代のこと。本作が公開された1978年ともなると、すっかり老けちゃって、最初見たときは誰か分からなかったほどだ(;^_^A

後半のクーデターシーンに至ってようやく、戦闘機を爆破するといった派手なシーンが増えるが、前半までは軍人たちの心理的駆け引きが中心に描かれているので、結構地味である――付け加えれば、オトゥール主演の映画で同様にドロドロとした権謀術数を描いたのが『冬のライオン』である

同じ英語圏と言えども、アメリカ映画とイギリス映画とでは、雰囲気や映画の作り方が全然違うのだなぁ、ということがよく分かる。

 

パワープレイ [DVD]

パワープレイ [DVD]

 

 

・『二郎は鮨の夢を見る

2014年、安倍首相とオバマ大統領(当時)が肩を並べて寿司を食したのが、東京・銀座の高級寿司店「すきやばし次郎」であった。あのミシュランガイドでも10年以上連続して三ツ星レストランに選ばれている。

本作は、そんな「すきやばし次郎」の店主・小野二郎(次郎ではない)を追ったドキュメンタリー映画である。

二郎氏は、一言で評するなら「求道者」だ。実にストイックに、寿司の道を探究しつづけている。

僕もこうしてブログを毎日書いていると、よく人からは「よくもまぁあれだけの分量を毎日コツコツと更新できるものですね」と驚かれる。だが二郎氏の徹底したストイシズムに比べたら、毎日ブログを書く程度のことは、どうってことないのである。

それにつけても驚かされるのが、二郎氏の凛とした佇まいだ。撮影当時、彼の年齢はすでに85歳に達していたはずだが、実に矍鑠(かくしゃく)としており、まったく年齢を感じさせない――92歳となった今日でもなお健在であり、現役職人として寿司を握っているのだという

彼の仕事への熱意はもはやほとんど「仕事中毒」とすら言っていいほどで、正月休みになると調子が狂うのだという。そのように常に緊張した現場に身を置いているからこそ、あのような凛とした佇まいになれるのだろう。

願わくば僕も、こういう老人になりたいものだ。

 

さて、ここでひとつ警告。お腹がすいているときは、絶対に本作を見ないように。いわゆる「飯テロ」になります(w

 

 

・『ファイナル・カウントダウン』

1980年のアメリカ・ハワイ沖。米海軍の原子力空母「ニミッツ」が航行していると、目の前に突如ナゾの嵐が発生。巻き込まれたニミッツは、なななんと、1941年の12月、すなわち真珠湾攻撃直前の世界へとタイムスリップしてしまう……!

という、わが国でいうところの『戦国自衛隊』的な内容のSF映画である。ニミッツも、1941年なんてケチ臭いこといわずに、思い切って戦国時代あたりまでタイムスリップしておけば、世界征服だってできただろうに、残念でしたねぇ~(w

と冗談はさておき、1941年の世界に放り込まれたニミッツの前に、日本軍の艦隊が迫る。かくして乗組員たちは、決断を迫られるのだ。軍人として祖国のために戦うべきか、それとも未来人として歴史の変更を拒むべきか。

タイムスリップもののSFでは定番のタイムパラドックスの話もあり、『バック・トゥー・ザ・フューチャー』的なラストも含めて、見ていてとても楽しい。

途中で捕虜になる零戦乗りの日本兵の日本語が案の定ヘンなイントネーションなのもご愛敬(w)。愛すべきB級映画だ。

 

ファイナル・カウントダウン [DVD]

ファイナル・カウントダウン [DVD]