Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第220回)

・『プロフェッショナル』

1917年のメキシコを舞台に、白人と黒人からなるガンマンの一味が西部劇を繰り広げる。

一般に「西部劇」と言えば、19世紀後半のアメリカ西部が舞台。20世紀初頭のメキシコが舞台の本作は、したがって西部劇としてはギリギリの設定、と言っていいだろう。

さて、「1917年のメキシコ」というところがポイントなのだ。近現代史に詳しい方ならピンとくるだろうが、当時のメキシコはメキシコ革命のまっただなか。当然、本作のガンマン一味も、否応なくこの革命の嵐のなかへと巻き込まれることとなる。

 

僕は、どうしても時代性を思わずにはいられない。

本作が公開されたのは、1966年。アメリカではまだ公民権運動の余波が続いていたころである――主人公のガンマン一味のなかに黒人もいたことを思い出してほしい。それから2年後の1968年には、世界各国で革命の嵐が吹き荒れることとなる。

革命は、しかしながら必ずしも人々を幸せにするとは限らない。劇中、こんなセリフがある。「革命と恋は似ている。どちらも裏切る」

なるほど、これは名言だ(w)。どちらも共通して、「こんなはずじゃなかった」という落胆を、人々に味わわせる。いや、落胆で済めばまだいいのだ。中国の文化大革命などは、どれほどの人命を奪ったことか!

ともあれ、本作は革命の時代・1960年代が産んだ、一風変わった西部劇であった。

 

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・『プレシディオの男たち

ショーン・コネリー演じる主人公は、厳格なMP憲兵。もうひとりの主人公格である若い刑事は、かつて主人公の部下のMPであったが、不祥事ゆえ軍隊をクビになったという苦い経緯がある。そのためかふたりの関係はどうにもギクシャクしている。

そのうえ、メグ・ライアン演じる主人公の娘とこの若い刑事が恋仲であり、父が絵に描いたような真面目人間であるため、父と娘の関係も芳しくないというのだから、主人公の人間関係は実に殺伐としたものである。

そんななか、サンフランシスコのプレシディオ基地にて、女性MPが殺害されるという事件が発生。主人公と若い刑事はさっそく捜査を開始する。やがて、東南アジアと関わりのある、とある密輸組織が捜査線上に浮上する……。

冒頭でのカーチェイスや、ラストのミネラルウォーター工場での銃撃戦は、なんともスリル満点。ギクシャクとしていた主人公、娘、刑事の三人も、最後には和解する。良く出来た娯楽映画だ。

ショーン・コネリーがとにかく渋くてカッコイイ!(w

 

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・『東京無国籍少女』

押井守という映像作家は、アニメ監督という印象が強いが、実は実写映画も撮っているのである。本作もまた、押井監督による実写映画である。

白を基調とした、無機質な印象の学園。主人公の少女は、かつてはその将来を嘱望されていたようだが、現在ではなにやら心理的トラウマを抱えているようで、周囲の同級生たちとの仲も良くない。

「あぁ、これは学園モノなのかぁ」と思っていたら……。

中盤からまさかの超展開(w)。ロシア兵たちが突如侵入し、学園はたちまち血の海と化す。そんななかで“覚醒”した少女は、機関銃でロシア兵をガンガン殺戮して廻る。

「それなんて『セーラー服と機関銃』ですかwww」と思わず笑ってしまうが(w)、終盤ではさらに超展開。主人公が目を覚ますと、そこは戦場であり、それまで教師として登場していた人物も、軍隊の将校となっている。さては今までの学園生活は、すべて夢だったのか。

……とまぁ、あらすじの紹介はこのへんまでとしておこう(w)。中盤の超展開を見ると「一体この映画は何なの???」と混乱してしまうが、「お前は何者だ」とのロシア兵の問いに少女が「私は兵士だ」と答えることや、ロシア兵の射殺シーンで北方領土の地図が描かれることなどから、ようやく本作のテーマが見えてくる。

主人公の少女は、戦後日本のメタファーであったのだ。

いったんこれに気づくと、本作がにわかに面白くなってくる。少女が受けたトラウマとはすなわち敗戦であり、少女の身体についていたふたつの火傷痕は、原爆のメタファーであろう。

少女にとっての敵が中国でもなくアメリカでもなく、ロシアだというのがまたなんとも興味深い。そういえば押井監督の『イノセンス』でも北方領土が出てきたのを思い出す。押井監督にとって、ロシアは重要な意味を帯びた隣国なのかもしれない。

 

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・『ドローン・オブ・ウォー

かつて、湾岸戦争ではミサイルが標的を破壊する様子がテレビモニターに映し出され、「ニンテンドウ・ウォー」とまで揶揄されたものだが、時代はさらに“進歩”した。

本作の主人公は、アメリカ空軍の軍人。アフガンのテロ容疑者たちをミサイル攻撃するのだが、実は主人公自身はラスベガス近郊の基地におり、毎日コンテナのなかに入ってドローンを遠隔操作しながら、地球の裏側で戦争をしているのである。当然、“勤務”が終了するとコンテナから出て、自宅へと帰るのである。

事実に基づいて制作されたという本作を見ると、もはや戦争はゲームになったということがよく分かる。いまや、新兵もゲームセンターでリクルートするのだという。既存の陸海空軍に加えてサイバー軍が新たに創設されれば、軍人のオタク化はますます進むことだろう。元パイロットで昔気質の軍人である主人公は、そうした環境にどうしても耐えられない。やがて彼は精神を病んでいく……

現代の戦争を考えるにあたって、極めて有意義な視点を与えてくれる一作だ。

 

 

・『コングレス未来学会議』

さて、今月のトリを飾ってくれるのは、この作品。実に不思議なSF映画である。

前半では、主人公の女優が身体をスキャンされるまでが実写で描かれる。スキャンされた彼女の身体はデジタルデータとして映画会社に管理される。もはや「撮影」などという概念は消失し、映画会社はこのデータを使って映画を「作成」するのだ。

中盤、スキャンから20年後、主人公は「アブラハム・シティ」なる都市へと招かれる。ここでは人間はなんと「アニメ化」(!)されており、人々はアニメのキャラクターとして生活を送っている。本作は、ここから実写ではなくアニメ映画となる。

終盤ではさらに20年の歳月が流れ、なんと世界全体がアニメ化されてしまう。このアニメ化された世界では、性別も年齢も容姿も、薬によって自由自在に操れる。人々は平和な暮らしを謳歌している。

主人公は、しかしながら難病に苦しむ息子のことを心配する。どうやら息子はアニメ化された世界にはいないようだ。彼女は息子と再会すべく、あえてアニメ化された世界から離れ、その外部、すなわち殺伐としたリアル世界へと戻る。ここで本作はいったん実写映画に戻る。

だがリアル世界にて、息子はちょうど入れ違いのかたちでアニメ世界へと旅立ったと聞かされる。主人公は再度アニメ世界へと戻り、本作は幕を閉じる。

……というわけで、実写パートとアニメパートが半々という、実にユニークかつ摩訶不思議な映画である。

主人公は一度はリアル世界へと出るが、結局はアニメ世界へと戻って終わってしまう。その点、一貫して仮想世界より現実世界に重きを置いた『マトリックス』と比較しながら本作を見ると、とても興味深い。

 

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