Furusawa Keisuke's blog

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書評『超訳「般若心経」』

大乗仏教の経典「般若心経」(はんにゃしんぎょう)

難解で近寄りがたいイメージのあるこのお経を、もっと現代人に親しんでもらおう、理解してもらおうという試みは、これまで幾度となくなされてきた。

youtube般若心経のコーラスバージョンラップバージョンなるものを聞いたときには、そりゃあもう、腹がよじれるかというくらいに笑いころげたものだ(w

 

今回ご紹介する『超訳「般若心経」』(PHP研究所)もまた、そんなポップな般若心経普及の試みのひとつに数えられるかもしれない。

著者は、認知科学者の苫米地英人さん。本ブログでは先日、苫米地さんの『お釈迦さまの脳科学』という著作を取り上げたばかりだ

今回の『超訳「般若心経」』では、苫米地さんは自らの大胆な解釈にもとづき、般若心経を読み解いていく。

 

冒頭、苫米地さんはまず、般若心経というお経がこれまでたどってきた歴史について簡単に説明。つづいて、「空」(くう)、「縁起」など、大乗仏教のキーとなる概念の解説に入る。

もっとも般若心経には、苫米地さんに言わせれば、「無」と「空」を混同している箇所があるとのことで、彼はあるべき正しいテキストへと“添削”している。たとえば、かの有名な「色即是空 空即是色」の箇所を「色即是無 無即是色」に直す、といった具合に。

「えーっ! よりにもよって、お経を“添削”するぅ!? なな、なんて罰当たりな!!」

と皆さん驚かれることだろう(;^ω^)。だがこれも、“苫米地節”なんである。

 

ひととおりの解説が終わった後、いよいよ苫米地さんによる般若心経の現代語訳が披露され、つづけて、なぜそのように訳したかについて解説がなされる。

この箇所は、実際に皆さんが本著を手に取って読んでみたほうがいいだろう。非常に、勉強になる箇所だ。

 

終章、苫米地さんは、仏教の空概念をもっと日常生活に生かすことを提案している。

空は、無と混同されがちである。現に般若心経もこのふたつを混同している、と苫米地さんは主張している。

実を言うと、僕もかつては同じ誤解をしていた。「あぁ、なんだ。仏教はどうせこの世は無なんだ、と言ってるんだ。やれやれ」とニヒリズムに浸っていた。

苫米地さんに言わせると、しかしながらそうではないのである。空はむしろ、ポジティブな概念なのだ。

仏教によればすべてが空であり、当然この自分もまた空である。自分が空だというのなら、現在のこの自分は決して固定されたものではない、ということになる。つまり、これからいくらでも、なりたい自分になれる、という意味でもあるのだ。

なるほど! こう考えると、人生前向きになれる。

僕は苫米地さんのこのポジティブな空解釈を支持、今後の人生に生かしたいと思う。

 

話は変わるが、苫米地さんは本著のなかで、予備知識を備えること、繰り返し読むことの大切さを訴えている。

≪ちょっと難しい話も出てくるかもしれませんが、とりあえず「ふうん、そうなの」くらいに読んでおいて、添削と超訳を読み終えたあとでもう一度読んでみてください。何の予備知識もない状態で読んだときと比べて、頭に入ってくる度合いが違っているのがわかると思います。

 人の脳は知らないことは認識できません。しかし、知っていることだと「ああ、これ知ってるよ」と読み飛ばしてしまうおそれがあります。このジレンマを解消する方法に「何度も読む」というものがあります。何度も読むことで、知らなかったことが知っていることと結びついて、認識できるようになってきます。≫(43‐44頁)

このことは、僕の経験に照らしてみても、まず間違いない。

本ブログでは以前、井筒俊彦さんの『イスラーム思想史』を取り上げたことがある。読み始めた当初は予備知識がまったくなかったので閉口したが、さいわいwikipedia日本語版の「イスラーム哲学」なる項目が異様なまでに充実しており、そこで“予習”してから再度読んでみたところ、今度は驚くほどすんなりと情報が頭に入ってきた。

この経験から、僕は読書するにあたっての予備知識の重要性を認識した。本当に、脳への浸透度が全然違うのだ。wikipediaは、予習教材としては最適である。

もし本の内容に関連する項目がwikipediaになかった場合は、苫米地さんも言っているように、「何度も読む」ことだ。一回目はざっとでいいから最後まで読んでみて、二回目に今度はじっくりと読むのである。この方法ならば、だいぶ情報が頭に入ってくる。

以上が、僕がこれまでの読書経験でつちかった経験則であった。それを、本著で苫米地さんが裏付けてくれた。うん、やっぱりこのやり方で良かったんだ。これからも、この調子でいこう。

 

超訳「般若心経」 (PHP文庫)

超訳「般若心経」 (PHP文庫)