Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第223回)

・『岸辺の旅』

黒沢清監督といえば、いまや日本映画界を代表する監督のひとり。ホラー映画の名手として知られている。

本作は、しかしながらそんな黒沢監督らしからぬ(?)、実にさわやかな映画であった。

浅野忠信深津絵里演じる、主人公の夫婦。傍目にはごく普通の若夫婦のように見えるが、このふたりには実は秘密があった。

なんと、夫は3年前にすでに死亡した、幽霊であったのだ。それでも見た目は生きている人間となんら変わりないため、行きかう人々はみな彼をスルーしている――唯一、電車のなかで幼児が夫に異様に関心を寄せるのが例外である

夫婦は、夫にとっての思い出の地をいろいろと旅してまわる。旅先では、夫同様に幽霊となってしまった人もいるが、彼は夫婦との交流を通じて“成仏”、この世界から消える。彼の住んでいた部屋も、たちまち廃墟と化してしまう。

言い忘れていたが、黒沢監督は廃墟を美しく描くことにかけては定評がある。本作でわずかではあるが登場する廃墟もまた、切なさと美しさとを同時に湛えている。

夫婦は行く先々で、人々と心温まる交流をする。不思議な映画だ。幽霊が出てくるというのに、観客にまったく恐怖を与えない(w)。夫が成仏するラストにいたるまで、後味の良い作品であった。

 

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・『幻の女』

殺人事件の犯人と疑われた男性が冤罪で逮捕され、死刑判決を受けてしまう。この男性の秘書であった主人公の女性は、彼の無実を証明すべく、真犯人探しに奔走する。彼女の執念は終盤ついに実を結び、真実が明らかになる……。

主人公を演じるエラ・レインズがいかにも意志の強そうな女性、という感じで印象に残りましたね。

 

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・『マネー・ピット』

とっても愉快なコメディ映画だ。

トム・ハンクス演じる主人公の弁護士の男。NY郊外にある豪邸を破格の安値で購入し、さっそく妻と一緒に移住する。やったと大喜びのふたりだが、もちろんこの物件には裏があった。

なんとこの邸宅、とんでもない手抜き工事であったのだ(w)。それも、強度が足りないといった次元の話ではない。たとえば、階段を登ろうとすると、階段が無残にも崩れてしまう(w)。床は歩くだけで抜ける。壁にはガンガン穴があく。そのたびに修理を余儀なくされるのだが、当然そのつどカネがかかりまくる。主人公がこれじゃあまるでマネー・ピット(金食い虫)だと愚痴るのが、本作のタイトルの由来である。

邸の家具が壊れまくるコメディ展開が『ホーム・アローン』的でとにかく面白い。ひさびさに映画鑑賞中、声を出して笑ってしまった。これまでいろいろな映画を見てきたけど、やっぱり1980、90年代のハリウッドの娯楽映画が一番楽しくて好きだなぁ。

あ、言い忘れていた。本作はかのスティーブン・スピルバーグが製作総指揮をしている(監督は別)

 

 

・『クリーピー 偽りの隣人』

こちらも、さきほどの『岸辺の旅』同様、黒沢清監督による作品である。ただし、『岸辺の旅』が「白い黒沢監督」(白沢監督?w)だったとするなら、本作はまさしく“黒”沢監督の映画である。

西島秀俊演じる主人公。警察を退職、大学の教員となった彼は、首都圏の山間に近い住宅街へと引っ越してきた。一見のどかに見えるこの町だが、主人公の家の隣に住む、香川照之演じる男が、これまたとんでもないモンスターであった。

この男、竹内結子演じる主人公の妻との初対面のシーンからしてすでに意味不明のキレ方をするなど、何とも言えない不気味さが漂う。かと思えば、電車のなかでお年寄りに席を譲るなど、「アレ? 実はいい奴なのか?」と思わせるシーンもある。だが物語が進むにつれ、彼の常軌を逸した残虐性が明らかになるのである。

先日取り上げた『ナイトクローラー』同様、本作も登場人物の“サイコパスっぷり”が見ものだ。

サイコパスというのは、単純に悪人というわけでもない。むしろ、「善人/悪人」というカテゴリー分けを超越してしまっているのが、サイコパスなのだ。嫌な奴かと思えばいいところもあり、それでも圧倒的に悪である――それが、サイコパスなのだ。

そんな分類不明の恐怖を、香川照之が見事に表現している。さすが、現代日本を代表する名優だ。個人的には、コーエン兄弟監督『ノーカントリー』におけるハビエル・バルデムの演技と双璧をなす怪演であった、と大いに評価したい。

いやぁ、それにしても怖いw(;^ω^)。『岸辺の旅』は、幽霊が出てくるのにまったく怖くない映画であったが、本作はその正反対、幽霊などまったく出てこないのに圧倒的に怖い映画であった。

やっぱり、本当に怖いのは幽霊などではなく、生身の人間のほうなのだ。

 

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・『神田川淫乱戦争』

黒沢清監督の記念すべきデビュー作となったのが、本作『神田川淫乱戦争』である。タイトルからもお分かりいただけるとおり(w)、ピンク映画である。日本を代表するホラー監督のキャリアは、意外にもピンク映画から始まったのだ。

川沿いに住む、ふたりの若い女。川を隔てた向こう側のマンションには、見るからにガリ勉の受験生がいる。彼はマザコンのようで、あろうことか母親としょっちゅう愛撫しあっている。彼に興味を持ったふたりの女は、このガリ勉くんを母親から保護する意味合いもかねて、マンションへと乗り込む。かくして川を挟み、ふたりの女と母親とでガリ勉くんを取り合う淫乱戦争が勃発した。

まぁ、自主映画のようなものなので、たとえば役者のビンタの仕方なども、なんともお粗末(w)。黒沢監督が今見たら、恥ずかしがるかもしれない。しかし、本作を撮った若き監督が、後に『岸辺の旅』『クリーピー 偽りの隣人』といったスゴイ映画を撮るのかと思うと、なんとも感慨深い(w

余談ながら。本作では黒沢監督のほかにも、『Shall we ダンス?』でおなじみ周防正行監督が編集を、ドキュメンタリー映画でおなじみ森達也監督が俳優のひとりとして制作にたずさわっている。なんと豪華なメンツ!

 

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