Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第230回)

・『カルテル・ランド』

メキシコ社会を蝕む犯罪組織「カルテル」をテーマに描いた、ドキュメンタリー映画である。

カルテルは、自らに逆らう地域住民を次々と殺害していく。その手口は残忍そのもの。斬首して生首を晒すというのだから、もはやISあたりと大差ない。

かように残虐なカルテルに立ち向かうべく、地域住民たちは結束して「自警団」を結成した。もはや政府などあてにならないので、この自警団が直接カルテルと戦うのである。彼らは勇敢で、着々と“戦績”を挙げていく。

メキシコ各地に雨後の筍のように次々出現した自警団は、しかしながら次第に、政府の傘下に入って警察組織として再出発するグループと、あくまで独立組織としてカルテルと戦うグループとに分裂していく。さらには自警団自体が、新たな犯罪組織へと変貌を遂げていくのである。なんとも皮肉な話ではないか(;^_^A

本作では、メキシコの隣国・アメリカも描かれる。カルテルは国境を超えてアメリカにまで進出しており、彼らに立ち向かうべく、これまた地域住民たちが自警団を結成、彼らと戦っているのだ。本作は2015年公開の映画だが、自警団のメンバーたちが2016年の大統領選においてトランプを支持しただろうことは、容易に推察できる。

 

 

・『美しい星』

桐島、部活やめるってよ』でおなじみ吉田大八監督が新たに手掛けたのはなんと、かの三島由紀夫の唯一のSF小説『美しい星』の映画化であった。

吉田監督は大胆にも、舞台を(原作が書かれた)20世紀半ばから21世紀の現代へと移し、テーマも核戦争から地球温暖化へと改めている。

主人公である“火星人”の父親を演じるのは、リリー・フランキー。あまりに絶妙のキャスティングに、思わず舌を巻いてしまう(w)。原作では、父親はあまり働かずに資産を切り崩しながら生活しており、そのせいであまり世間擦れしていない、という設定になっていた。独特の存在感のあるリリーには、まさにうってつけの役だ。

“金星人”の娘役の橋本愛も良い。Venus(ヴィーナス)の英名を持つ金星の出身ゆえに、原作では娘は絶世の美女という設定であった。橋本ならピッタリだ。

本作は、巷では難解な映画と評されているようだが、終盤における“異星人”黒木と主人公との論戦シーンは、原作と比べると短く、かつ分かりやすい内容になっている。原作では極めて難解な思想的問答が延々と続くのだ。

かといって、けっして物足りないというわけでもない。本作において最も評価されるべき点、それは笑えるということだ。リリーが火星人としてひととおり喋った後に必ず見せるキメポーズなんか毎回笑えるし(w)、橋本がUFOを召喚するときに見せるナゾの手の動きも笑える。

「えっ、あの三島由紀夫原作の映画なのに、笑っちゃっていいの?」

と皆さん戸惑われるかもしれない。笑っていいのだと僕は思っている。

原作も、意外とコミカルな部分も多いのに、三島が例によってあの格調高い文体で書くものだから、内容と文体とにギャップが生まれ、それが読者を笑わせるのである。本作も、リリーや橋本の仕草はどうみてもただのギャグなのに、それを吉田監督が美しい映像とキレのある演出で撮るものだから、原作同様にギャップが生まれ、笑えてしまうのである。

そう、『美しい星』はギャップで笑う作品なのだ。吉田監督は、それをよく理解している。

 

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・『ローマ法王になる日まで』

ローマ法王・フランシスコの半生を描いた伝記映画である。

後の法王となる主人公・ベルゴリオ神父は、アルゼンチン出身。若い頃は化学を専攻する理系学生であったが、やがて神の道を志し、イエズス会へと入会する。当初は意外にも日本への赴任を希望していたが、結局アルゼンチン本国で聖職者として働くこととなる。

当時のアルゼンチンは、軍事独裁の時代であった。軍部の手口は粗暴にして陰湿であり、拷問は当たり前、反逆者の遺体は飛行機から投げ捨てられ、僻地へと投下される。まるでアジアの開発独裁の国のようだ。こんなことがアルゼンチンでもあったのか、と我々日本の観客は驚かされる。

そんな野蛮な時代にあって、ベルゴリオ神父は教会内の改革派として、貧しい人々のために日々尽力するのである。

ラスト、前法王ベネディクト16世の予想外の退位により、ヴァチカンにて急遽コンクラーヴェ(法王選出会議)が開催。ベルゴリオ神父はそこで多数の票を獲得し、新法王へと選出された。映画は、法王が近いうちに(当初の赴任希望地であった)日本を訪れる日が来ることだろうとのナレーションを流し、終幕する。

法王は、どうやら知日家のようだ。だが我々日本人は、ローマ・カトリック教会についてあまりに無知、無関心すぎはしないか。とりあえずコンクラーヴェを根比べとかけるダジャレは、大概にしたほうがいいだろう。

 

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・『さざなみ』

もはや老境に達した主人公夫婦。そろそろ結婚45周年を迎えるが、そんなある日、夫のかつての恋人で遭難事故にあった女性の遺体が発見されたとの知らせが届く。

一見平静を装うも、明らかに動揺を隠しきれない夫。妻はやがて、屋根裏部屋に夫のかつての恋人の写真が今でも保管されていることに気づく。しかも彼女は、どうやら妊娠していたようなのだ……。

妻は疑心暗鬼に陥る。夫は本当に自分を愛していたのか。自分にかつての恋人の姿を投影し、彼女をこそ愛していたのではなかったか、と。

本ブログで何回も述べてきたように、死人に口無しなんて嘘、死者はときに生者以上に生者のふるまいを強く規定する。死んだはずの元恋人は、長年連れ添った夫婦のあいだに、まさに“さざなみ”を起こしたのである。

 

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・『LOVE』

過激な性描写で知られるギャスパー・ノエ監督による作品。

とにかくセックス、セックス、またセックスのオンパレード(w)。上映時間の実に半分以上がベッドシーンなんじゃないかというくらいだ(w

おまけに本作、劇場ではなんと3D上映されたというのだから笑ってしまう。きっと観客たちはさぞかし臨場感あふれるセックス場面を目撃、アソコがおっきしたことだろう(;^ω^)

劇中、セックス三昧の日々を送る主人公だが、彼の佇まいはとても満足しているようには見えない。童貞諸君は「セックス三昧」などと聞くとうらやましがることだろうが、どうやらその実態はさほど楽しいわけでもなさそうだ。