Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『完本 うらやましい死に方』

僕は今、33歳。今年の誕生日で34歳になる。

最近、「あぁ人生、後半戦に入ったな」と実感することが多い。

「オイオイ、まだ30代なのに何言ってんだw」と年長の人たちからは呆れられてしまいそうだ。

たしかに、人生80年とすれば折り返し地点は40歳だ。30代はまだ前半戦ということになる。

だがそれは、時間という現象を客観的に見た場合だ。客観的時間と主観的時間は異なる。子供のころと大人になった今とでは、時間の流れ方が全然違う。子供のころは、一年一年が濃密だった。今では毎年同じことの繰り返しだ。大人になると、あっけないくらい時間がどんどん過ぎ去っていく。

主観的には、したがって、もう人生の後半戦に入ったという印象が強い。

 

後半戦に入ると、若いころとは考え方が変わる。

昔だったら「これから自分に何ができるか」を真っ先に考えた。今では「これから自分に何ができないか」をまず第一に考えるようになった。

以前、書店で「50代からは人生引き算」という本を見かけたことがある。どうやら、残り少ない人生の時間を無駄遣いすることのないよう、やりたいことを厳選しろ、という意味らしい。それをいうなら、僕は30代にしてすでに人生引き算の発想で生きている。

皆さんは、ブラジリアという都市をご存知だろうか。南米の大国・ブラジルの首都である。このブラジリアは計画的につくられた都市であり、「都市まるごとが現代建築」という、極めて特異な都市でもある――おかげで世界遺産にも登録されている

このブラジリアに、僕は前々から関心があり、いつか行きたいと思ってきた。でも最近、「たぶん自分は一生、ブラジリアに行く機会はないんだろうな」との思いが僕のなかで強まりつつある。

はるばる地球の裏側まで行くには体力もいるし、旅費だっている。その旅費を稼ぐために長時間働くくらいなら、同じ時間を、家で本を読んだり映画を見たりするのに充てるほうが有意義ではないか。

いいじゃないか、ブラジリアなんて。図鑑かなにかで写真を眺めればそれで十分だろう――そういうふうに最近では思っている。

 

最近、死ぬまでの過程について考えることが増えた。それまでも死について考えることはよくあったが、最近考えるのは死“に至るまでの過程”だ。

眠るようにポックリと亡くなる幸せな人は、少ない。たいていの場合、死ぬ間際になると、今まで慣れ親しんだ臓器たちが相次いで不全を起こす。そして苦しみながら死ぬ羽目になるのだ。こうした死に至るまでの過程が、次第にリアルに実感できるようになってきた。

今思えば、昔の僕は、まだ死を観念的に捉えていた。死の前に肉体的な苦しみが待ち受けているということが、よく分かっていなかった。そういう意味で、死に対するリアリティが希薄だった。

 

……失礼、書評だというのについ老人の無駄話が続いてしまった。

本ブログでは先日、『僧侶が語る死の正体』という本を取り上げた。この本のなかで、著者のひとりである宗教学者釈徹宗さんは、極楽往生を遂げた人々の伝記を集めた「往生伝」と呼ばれる書物について取り上げていた。

そんな釈さんが、言うなれば「現代の往生伝」として紹介していたのが、小説家・五木寛之さんがまとめた『うらやましい死に方』という本であった。

というわけで、ハイ、ずいぶんと遅くなってしまったが(w)、ようやく本日取り上げる本の紹介である。

本著『完本 うらやましい死に方』文藝春秋は、市井の多くの人々の臨終場面が描かれた本である。

気をつけてほしいのは、五木さんは本著の著者ではなく編者だということだ。本著の著者は、極楽往生した死者たちを見送った、遺された家族の人々である。プロの物書きではない、一般人である彼らからの投稿を、五木さんが一冊の書物にまとめたのだ。

「プロの物書きではない」といっても、彼らの文章はどれもこれも例外なく我々読者の胸を打つ。文章において大事なのはテクニックではない、心がこもっているかどうかなのだ。そのことを、本著はよく教えてくれる。

 

本著に登場する、極楽往生した人たちは、皆とても安らかに旅立っている。きっと皆、自分の人生に満足しながら逝ったに違いない。まさに「うらやましい死に方」だ。

転じて、僕自身はどうだろう。僕には彼らのような逝き方(あるいは、生き方)は、できるだろうか。

残念ながら、できないだろな、と思った。きっと一休禅師のように「あぁ、死にとうない、死にとうない」と言いながら、あるいは身体的苦痛から「痛い痛い」とのたうち回ったあげくに死んでいくんだろうな、と思った。

もっとも、そういう僕のような人間をこそ、阿弥陀如来さまは憐れんで救ってくださるのかもしれないけれど。

 

完本 うらやましい死に方

完本 うらやましい死に方