Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第237回)

・『海難1890』

まったく、政治が映画に口を出すと、ロクなことがない。たいてい、説教臭い映画になる。日本とトルコとの友情を描いた本作も、もしかしたらそうかな、と思い心配だったのだが、実際に見てみたら、予想以上に良い映画であった。

1890年、日本を訪れていたオスマン帝国の艦船「エルトゥールル号」が和歌山県沖にて座礁した。乗組員の多くが死亡。数少ない生存者は、海岸に打ち上げられた。絶望する彼らに救いの手を差し伸べたのは、地元に住む日本の漁師たちであった。

終盤、舞台は一気に、1985年のテヘランへと跳ぶ。「え、イラン? エルトゥールル号関係ないじゃん!」と思われるかもしれないが、いやいやそんなことはない、ちゃんと関係あるのである。これについては後述する。

映像が美しく、俳優陣も好演している。とりわけ、和歌山の町医者を演じる内野聖陽がさすがの貫録。学生時代に英語劇をやっていたというだけあって、英語も実に堪能である。

本作の欠点をあえて挙げると、少し説明不足と思われる個所があることだ。ラスト、戦火に取り残されたトルコ人たちは、それでもなお日本人に飛行機の座席を譲る。我々日本の観客は失礼ながら「トルコ人はどうしてこんなにもお人好しなのだろう?」と驚いてしまう。

これは、多くのトルコ人が、このエルトゥールル号の逸話を知っているからだ。だからこそ、日本人に同情的なトルコの大使館員――主人公のエルトゥールル号の船員と同じ役者さんが演じている――エルトゥールル号の話を持ち出すと、最初は渋っていたトルコ人たちも皆、納得するのである。この「多くのトルコ人エルトゥールル号を知っている」点について、日本の観客にもう少し説明したほうがよかったのではないか。

本作は、説教臭い部分もないわけではない。最後に両国の友情をナレーションで(=言葉で)謳ってしまうあたりはイマイチだと感じたが(w)、それ以外は良かった。

それにつけても、わりと最近になるまでエルトゥールル号の存在すら知らなかった日本人、戦時下に同胞が残されているというのにその救助もままならない日本国の情けなさよ……

 

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・『日本暗殺秘録』

近代日本史は、これすなわち暗殺の歴史でもあった。

本作はまさにタイトル通り、暗殺をテーマにした、一風変わった日本映画である。制作は東映

冒頭、桜田門外の変から始まり、大久保利通暗殺、そして昭和の血盟団事件へと至る。

本作は、この血盟団事件を中心に描いている。

ときに、1930年代。貧富の格差は極大に達していた。千葉真一演じる小沼正青年は職を転々とするものの、どれも長続きしない。やがて世の理不尽に憤った彼は、井上日召率いる血盟団に合流、テロルを企てる。

この時代そのものや当時暗躍した右翼を扱った書籍は数多い。だが、彼らについて本当の意味で理解しようと思ったならば、単に表面的な知識をなぞるだけでは駄目。彼らの心情にまで迫らなければならない。

そんなとき役に立つのが、映像と音声によって人々に強い印象を与える、映画である。本作はまさに、戦前の右翼の心情に迫るのにうってつけの教材、と言っていいだろう。

本作は、血盟団事件では終わらない。その後に起こった、相沢三郎による永田鉄山暗殺、そして二・二六事件までをも描き切っている。相沢と、二・二六青年将校のひとり磯部浅一の役を、それぞれ東映を代表する二大スター、あの高倉健(!)と鶴田浩二(‼)が演じている。こちらも見逃せない。

……もっとも、磯部はもうちょっとメンヘラっぽいキャラだったと僕は思っているのだけれど(;^_^A

 

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・『クローバーフィールド/HAKAISHA

皆さんは、「POV方式」なる映画用語をご存知か。

まるで素人が撮ったホームビデオのような体裁で映画を撮る手法のことである。これで成功をおさめたのが『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』。

本作もまた、この系譜に位置づけられる映画である。

アメリカ・NY。主人公の青年が仕事のため日本に移住するというので、友人らが集まり、お別れパーティーを開いている。と、そこへ、突如として謎の生命体が襲来。NYの街はたちまち阿鼻叫喚の地獄絵図に陥る。

謎の生命体はとても巨大で異様な形態をしており、「怪獣」としか言いようのない存在である。ここから、どうやら本作が日本の怪獣映画をオマージュして撮られたものらしいことが分かってくる。主人公の移住先が日本に設定されているのも、偶然ではないだろう。

本作のサブタイトル「HAKAISHA」は、調べてみると、邦題にのみ付けられたものだが――原題は単に"Cloverfield"――これはなんと、本作のプロデューサー、J・J・エイブラムスの指示によって付けられたものだという。制作陣の日本に対するリスペクトが、こういうところから伝わってくる。

もっとも、本作は上述のとおりホームビデオの体裁をとっているので、肝心の怪獣の全貌はなかなか見ることができない。それこそがむしろ制作陣の意図するところなのだろうが、僕はもっと怪獣の姿を見てみたかった。

 

 

・『しあわせ色のルビー』

こちらも、アメリカ・NYのお話。といっても、こちらでは怪獣は出てこない(w)

本作は、敬虔なユダヤ人の青年と結婚したアメリカ女の物語である。

NYには今日でもなお、保守的なライフスタイルを営んでいるユダヤ人たちが大勢住んでいる――むしろ、本国・イスラエルよりも保守的なくらいらしい

そんな保守的なユダヤ人とくっついたのが本作のヒロインであるが、勝ち気な性格で都会暮らしに慣れた彼女と敬虔なユダヤ人青年とで、うまくいくはずがない。結局、ふたりは破局してしまう。

率直に言って、ヒロインにはあまり感情移入することができなかった。僕としてはそれよりもむしろ、本作からその一端を垣間見れる、在米ユダヤ人の生活のほうが面白かった。

 

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・『大富豪、大貧民

本ブログでは以前、アーミッシュを描いた映画『刑事ジョン・ブック/目撃者』を取り上げた。

本作もまた、アーミッシュをテーマに描いたアメリカ映画のひとつである。

主人公夫妻はNYで暮らす大富豪だが、社員の裏切りにより脱税の汚名を着せられ、命からがらNYから脱出する。

彼らが行き着いた先は、アーミッシュの村であった。夫妻はそこでアーミッシュに成りすまし、彼らとともに生活を営む。はじめのうちは国税庁から逃れるべく嫌々村に潜伏していた夫妻であったが、アーミッシュとしばらく生活を共にしているうちに、次第に彼らの価値観、ライフスタイルになじんでいく。彼らは、刹那的な都会生活に疑問を抱きはじめる。

本作が優れているのは、都会人が純粋無垢なアーミッシュから一方的に学ぶというオリエンタリズム的展開ではなく、アーミッシュもまた保守的すぎる村のしきたりに愚痴をこぼし、都会人の助けを借りてそれを変革する、という描写がなされていることである。とてもフェアな描写だと感じる。

サスペンスであった『刑事ジョン・ブック/目撃者』とは異なり、本作はコメディ。とてもコミカルで、テンポ良く進む。実に楽しい映画だ。

 

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