Furusawa Keisuke's blog

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書評『アジア 反日と親日の正体』

本日ご紹介する本は、ジャーナリスト・酒井亨さんの『アジア 反日親日の正体』イースト・プレスである。

本ブログでは以前にも、酒井さんの著作『中韓以外みーんな親日』を取り上げたことがある。長く台湾に在住した経験のある、酒井さん。アジア諸国に関する豊富な知識、経験が彼の魅力だ。

 

本著にて取り上げられているアジアの国は、まず中国と韓国、台湾、それから東南アジア諸国だ。そう、東アジアだけでなく東南アジアの国々も入っているのがポイント。

我々日本人は、「アジアの国々」と聞くとすぐ、中国、韓国の二ヶ国“のみ”を思い浮かべてしまうという悪いクセがある。

酒井さんは、おそらくはそれを見越しているのだろう、本著にて台湾や東南アジア諸国についても論じることで、日本人の「アジアの国々」のイメージをアップデートしようと試みているのである。

酒井さんは、先述のとおり台湾に長く住んでいた経験もある。台湾のことなら、お手の物、というわけだ。

 

まずは、中国から。この国のポイントは、一枚岩ではないということである。

言語からして多様だ。酒井さんによると、同じ中国といえども北と南とでは言語がだいぶ異なり、その南のなかにもさらに多種多様な方言が存在するのだという。

民族的に見ても、北と南とでは遺伝子パターンが大きく異なる。北はモンゴルやシベリア、南はベトナムやタイに、むしろ近いというのだ。

中国人はまた、酒井さんに言わせれば、他のアジア諸国に比して民度が低い。酒井さんは、したがって中国の民主化には悲観的である。民主主義には、それを支える高い民度が求められるからだ。

酒井さんは、現在の共産党一党独裁体制を、もちろん褒めはしないものの、中国にとって一種の必要悪だと見ているようだ。

 

お次は韓国。酒井さんは、韓国に対しては中国よりも評価している。中国とは異なり、曲がりなりにも民主主義を達成した国だからだろう。

とはいえ彼は、韓国人がナショナリスティックに過ぎて自己を客観視できないなど、ちゃんと韓国人を批判することも忘れていないのだが。

そんな酒井さん曰く、「韓国人の反日はあくまでポーズに過ぎない」とのこと。実際にはそれほど反日でもないようなのだ。それならどうして、わざわざそんなポーズを?

≪台湾が屈託がない親日なのは、文化の基盤が日本と遠く離れており、日本に同化される心配がないためであり、韓国が反日のポーズを取るのは、そうでもしないと文化的に日本との区別がなくなるという恐怖心があるためだ。≫(118‐119頁)

この指摘は、とても興味深い。日本の保守派には韓国嫌いかつ台湾びいきの人が多いが、彼らは「台湾人は日本人と気質が似ているから親日なのであり、一方韓国人は日本人とはだいぶ異なる。だから彼らは反日なのだ」というふうに考えがちだ。

酒井さんに言わせれば、しかしながら事実は逆だったのだ。

 

お次は、その“日本と遠い”台湾。

周知のとおり台湾はとても親日的な国であるが、酒井さんはその「親日」とはあくまで“戦後”日本への愛着であり、戦前の日本を支持しているわけではない、とクギをさすのを忘れていない。

最後が東南アジアである。東南アジアでは「華人」と呼ばれる中国系の移民たちが多く暮らしている。

中国系なのだから当然中国に忠誠を誓っているものと皆さん思うだろう? ところが。

酒井さんに言わせると、華人だからといって親中とは限らないのだという。むしろ驚くべきことに、「中国なんか嫌いだ」という華人が増えているというのだ。

彼らは長く東南アジアで暮らしている間にすっかり現地社会に同化してしまい、いまや彼らのアイデンティティーは中国ではなく、自らの住む東南アジアの国にこそあるのだという。

これは、日本の移民問題を考えるうえで重要なヒントを我々に与えてくれる。

日本が仮に中国系移民を受け入れた場合、日本はチベットのように中国に併呑されてしまう、という議論が保守派の間では盛んである。僕自身、安直な移民受け入れにはやはり反対の立場だ。

しかしながら、中国系移民が来たからといって必ずしも中国に併呑されるわけでもないということが、この華人たちのケースから分かるのである。日本へやってきた中国系移民たちは日本社会に同化し、中国ではなく日本にアイデンティティーを感じるようになる可能性が、論理的には考えられるのだ。

現に我々は、そのような(元)中国人を知っている。

評論家の、石平さんだ。

中国生まれである石平さんは日本に帰化し、現在では中国系“日本人”として保守論壇で精力的に言論活動を展開している。彼のような熱烈な中国系日本人の愛国者が、今後この国に陸続と誕生する可能性だってありうるのである。

 

本著に限らず、酒井さんの著作は、良い意味で既存の右左の垣根を越境しており、我々に考えるヒントを与えてくれている。僕にはそれが、ジャーナリスト・酒井亨の一番の魅力と感じられる。

彼の著作に、今後も要注目だ。

 

アジア 反日と親日の正体 (イースト新書)

アジア 反日と親日の正体 (イースト新書)

 

 

この本もオススメ! BOOK GUIDE

・『台湾入門』(日中出版)

まさにタイトルの通り、酒井亨さんによる台湾入門書。

ビミョーに昔の本なので情報がやや古いのが難点ですが、台湾の近現代史、政治、文化などについて知ることができます。「台湾って、どういう国?」「てか、そもそも国なの?」と興味津々の方は、本著をご覧になると良いでしょう。

 

台湾入門

台湾入門