Furusawa Keisuke's blog

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書評『経済成長って何で必要なんだろう?』

社会学者の鈴木謙介さんが司会を務める、深夜ラジオ番組『文化系トークラジオLife』は、僕のお気に入りのラジオ番組のひとつだった。

タイトルに「文化系」とあることからも分かるように、この番組、基本的に人文系インテリをゲストに招くことがほとんどなのだが、あるとき、「経済成長」という、それまでとは一風変わったテーマが掲げられた回があった。

この回でゲストとして同番組に出演したのが、経済学者の飯田泰之さんであった。僕が彼の名をはじめて知った瞬間である。

この「経済成長」回では、飯田さんの平易な説明のおかげで、これまで知らなかった経済のことをいろいろと知ることができた。とても勉強になる回だった。

その後は、しかしながら深夜ラジオを聞く機会もめっぽう減ってしまい、飯田さんのことも失礼ながらすっかり忘れてしまっていた。

ところが、人の縁というのは不思議なものだ。その後、経済学者の田中秀臣さんを知り、彼を介してリフレ派の経済学者たちを多く知るなかで、僕は飯田さんと“再会”したのである。

 

前回前々回と、経済学者の松尾匡さんの著作を取り上げてきた。今回は、飯田泰之さんにご登場いただくとしよう。

『経済成長って何で必要なんだろう?』(光文社)である。

本著は、人文系言論サイト「SYNODOS」の企画の一環として行われた対談をまとめ、一冊の書籍としたもの。SYNODOSの主宰者である、社会学者の芹沢一也さん、評論家の荻上チキさん司会のもと、飯田さんが様々な分野の論客たちと対談する、という内容だ。

対談者のうち、岡田靖さんは飯田さんと同じく経済学者だが、それ以外の論客、すなわち赤木智弘さんはフリーライター湯浅誠さんは社会活動家である。

このように、学者だけでなくライターや活動家とも幅広く対談するところが、飯田さんの魅力のひとつと言っていいだろう――そういえば飯田さんは、社会活動家の雨宮処凛さんとも対談本を出していたっけ

それも、赤木さん、湯浅さんともに、リフレ派とは正直あまり縁がなさそうな論客である。本著を読むと、飯田さんはあえて縁がなさそうな論客を対談相手に選んだのだという。ますます彼の懐の広さを称えたくなった。

 

飯田さんの語り口を一言で表現すれば、「クールさ」といったところだろうか。

それは、先日取り上げた松尾匡さんの「お笑い」とは、ちょうど対極にある。

飯田さんの語り口は……なんと言えばいいのだろう、東大で社会学などを勉強した人文系院生に特有の、あの「ものすごく論理的な内容を丁寧な口調でまったく淀みなくベラベラとしゃべる」アレに似ている――人文系のインテリと接する機会の多い人なら「あぁ、はいはい、アレねw」とだいたいピンとくるはずである

 

本著は、まさにタイトルのとおり、経済成長の重要性について説く本である。

いまだに日本の、それも左派を自称する人たちには、「日本はもう(経済)成長しない」などと言う人が多いのだが、飯田さんは本著のなかで一貫して、経済成長は可能であり、また不可欠であると訴え続けている。

どうして経済成長しないと駄目なのか。本著にて飯田さんが言っていることを一言で簡潔にまとめてしまうと、経済成長がなければ弱者にしわ寄せがいくからである。弱者とは、たとえば若者、シングルマザーといった人たちのことだ。

反対に、経済成長すると、どうなるのか。まず、人手不足が起こる。そうすると、それまで職にありつけなかったフリーターなどの人々も、職にありつけるようになる。人々がどんどん住みやすい世の中になっていく、というわけなのだ。

このように、弱者を救うためにこそ、経済成長が欠かせないのである。

もちろん、「弱者なんて切り捨てちまえ!」というのであれば、経済成長などいらないということになる。

それならそれで構わない。

だが今の日本では、なにかにつけて「弱者!弱者!」と口にしているはずの左派の人々が、「日本はもう成長しない」などと言っているのである。これは、問題であろう。

 

本著が刊行されたのは、2009年のこと。それから10年近く経ち、第二次安倍政権のもと、大胆な金融緩和を含む経済政策「アベノミクス」が実行に移された。今の日本は、飯田さんの“予言”通り、人手不足の世の中となっている。失業率は改善し、賃金も上向いている。「日本はもう成長しない」など、嘘だったのだ。

あらためて、経済成長のありがたみを実感しつつある、今日このごろである。

 

経済成長って何で必要なんだろう? (SYNODOS READINGS)

経済成長って何で必要なんだろう? (SYNODOS READINGS)

 

 

この本もオススメ! BOOK GUIDE

・『日本を変える「知」 「21世紀の教養」を身に付ける』(光文社)

今回取り上げた『経済成長って~』の姉妹版ともいうべき書籍。こちらでも飯田さんや、上述の社会学者・鈴木謙介さんなどが活躍しています。

個人的には、社会学者・橋本努さんの論考が興味深かったです。