Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第241回)

・『フェリーニのアマルコルド

イタリア映画界の巨匠、フェデリコ・フェリーニの名画『フェリーニのアマルコルド』が、近年、デジタル技術によって修復、再版された。巨匠の過去の名作をこうして高画質で見られるのは、とても幸福なことだ。

本作は、ファシスト時代のイタリアの地方都市が舞台。街に暮らす名も無き人々の一年を描く。

ファシスト時代」というとどうしても、暗いイメージがつきまとう。たしかに本作でも、ファシスト党の軍事パレードの様子や、かの悪名高いひまし油による拷問シーンなどが描かれる。だがそれはあくまで、作中におけるひとつのエピソードに過ぎない。

本作を通じて描かれるのは、市井の人々の温かみのある日常だ。あの時代にあっても、人々の暮らしにはささやかな幸せが満ちていた。これを単に「暗い時代」と総括してしまうと、彼らのささやかな幸せは歴史のなかに忘れられてしまう。1920年生まれでファシスト時代に少年期を過ごしたフェリーニ監督は、そうしたささやかな幸せを忘れさせまいと、本作のメガホンを取ったに違いない。

フェリーニという映像作家は、まぁぶっちゃけ意味不明な演出も多いけれど(w)、本作を見ていると、「あ、この人は本質的に、“人情”の人だったんだな」ということがよく分かる。

ひさびさに、あぁ終わらないでほしい、このままずっと続いてほしい――そう思わせてくれる作品に出会えた。

 

 

・『ヤコペッティの大残酷』

本ブログでは以前、18世紀フランスの思想家・ヴォルテール『カンディード』を取り上げたことがある。本作は、その『カンディード』の映像化作品。

監督は、グァルティエロ・ヤコペッティ。先ほどのフェリーニがイタリア映画界の「巨匠」だとするなら、こちらは「鬼才」といったところか。

近世ヨーロッパ。主人公・カンディードは平和に暮らしていたが、あるとき彼の国は外敵の侵略を受ける。カンディードは、世界を放浪する羽目になる。

舞台は近世のはずなのだが、ここがヤコペッティの鬼才たるゆえん。戦闘シーンで突如、現代の迷彩色の軍服をまとった兵士が現れて機銃掃射したり、宮廷音楽家が王侯貴族の館で演奏するのがなぜかエレキギターだったり、ともうメチャクチャである(w

挙句、カンディード一行が新大陸に赴く場面――この場面自体は原作にもある――になると、急に舞台が20世紀のNYへと変わってしまう(w)。さらにはカンディードイスラエルの軍事基地に行ったり、とこれまたメチャクチャである(ww

ヤコペッティは、どうしてまた、こんな奇妙な演出をしたのだろう。原作のシニカルな雰囲気を再現したかった、というのもあるだろうが、やはり「現代社会もまた地獄」であることを伝えたかったからではないか。

近世と比べると、文明は飛躍的に進歩した。それでもなお、この世には苦と理不尽があふれている。ヤコペッティは、『カンディード』のテーマの普遍性を観客に訴えかけたかったに違いない。

……もっとも、単に「現代を舞台にしたほうが面白そうな絵が撮れるから」なのかもしれないけれど(;^_^A

 

ヤコペッティの大残酷 特別版

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・『世界女族物語』

これまたヤコペッティ監督による、こちらはドキュメンタリー作品である――というか、そもそもヤコペッティはドキュメンタリー出身なのであった

タイトルに「女族」などと奇妙な語句があるので、いったいどこの部族のお話だよと思ってしまうが(w)、本作は世界各国の女性たちを描いた作品である。

ヨーロッパなど先進国社会のほか、第三世界の原始的な部族も多く描かれる。

世界には、奇妙な風習がいっぱいだ。たとえば、女が労働をする社会がある。男は何をするかというと、顔にお化粧をしているのだ。我々とは逆である(w)。マレーシアの多夫一婦制の社会も面白い。そこでは妻が出産する間、いわば「第一夫人」的な位置づけの夫も横になり、一緒になって苦悶の表情を浮かべるのだ。

我らが日本も登場。ただしそこで中国っぽいBGMが流れるあたりは、いかにも欧米人の仕事といえようか(w)。それにしても、当時(1962年)の日本の光景がまるで途上国のようであることには、驚くほかない。

 

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・『ヤコペッティの残酷大陸』

これまたヤコペッティの手による本作は、先ほど紹介した『フェリーニのアマルコルド』とは対照的。一刻もはやく終わってほしいと思わせる作品だ。ただしクソ映画なのではない。逆だ。本作は「名画であるがゆえに観客を鬱にさせる」のである。

タイトルの「残酷大陸」とは、さてどこのことだろう。中国? アフリカ?

……意外なことに、それはアメリカであった。

本作は、アメリカにおける黒人奴隷の境遇を描いた――あるいは、告発した――作品である。

冒頭に登場するのが、奴隷船。実に不潔である。本作を見ていると、その不潔さが“生理的に”伝わってくる。映画ならでは、と言えよう。

船でアメリカへと到着した奴隷たちは、そこで白人たちにこき使われる。彼らはあるいは性のはけ口としても使われ、白人男性による黒人女性のレイプが後を絶たない。そして白人女性たちは、それを“獣姦”と呼んで忌み嫌うのである。

ヤコペッティが巧いのは、単純に「黒人=被害者=反体制=正義、白人=加害者=体制側=悪」としなかったことだ。

黒人のなかにも、たとえばメガネをかけていて教養のある者がいる。彼は奴隷としての自らの地位に満足しきっており、自由労働者と比べて奴隷の境遇が必ずしも悪いとはいえないことなどを、嬉々として語る。

あるいは、黒人がいかに低能であるかを力説する白人の学者。主人公――イタリア系のカメラマンという設定。おそらくは監督の分身的存在なのだろう――が「あなたはユダヤ系ですよね?」と質問すると、彼は顔をしかめつつ、しぶしぶ「そうだ」と答える。彼もまた、民族的マイノリティーだったのだ。

さて、最後に皆さんにひとつ“宿題”を。先ほどの奴隷船の話に戻るが、その中には男の奴隷のほか、女の奴隷もいた。彼女たちの多くは、妊娠していた。我々日本人は「へぇー、妊娠してたのか」で素通りしがちだが、よく考えてみてほしい。

どうして女の奴隷の、それも多くが妊娠していたのか。

ヒントは、奴隷船は「約3か月間、密室状態になる」ということ。ここまでの話を聞いた読者ならば、すぐにピンとくるはずだ。

 

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・『46億年の恋

ジャパニーズ・ホラーの代表格、三池崇史監督によるサスペンス兼“恋愛”映画である。

監獄内にて、ひとりの受刑者が同じ部屋のもうひとりの受刑者を絞殺、取り押さえられる。犯行動機は何か。さっそく捜査が開始される。

ストーリーが進むにつれ、犯人と被害者は意外にも、同性愛の関係にあったことが明らかになる。さては「46億年の恋」とはBLのことだったか(;^ω^)

本作は、とても不思議な映画だ。一貫して、リアリティよりも芸術性を重んじているため、映画というよりかはむしろ、演劇を見ているかのような感覚になる。監獄内も、なんともモダンで洒落ている。おまけにその外には謎のロケットやピラミッドまであるというのだから、あっけにとられてしまう。

う~む三池監督、この映画、難しいよぉ……(涙

 

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