Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『ボクは坊さん。』

本ブログでは先月、真言宗僧侶・白川密成さんの『空海さんに聞いてみよう』を取り上げた。とても読みやすく、それでいて印象に残る言葉の多い、良著であった。

本日ご紹介するのは、そんな白川さんのデビュー作『ボクは坊さん。』(ミシマ社)

白川さんが、これまでの半生で経験したこと、考えたことを綴ったエッセイ集である。

 

白川さんは、四国の真言宗の寺に生まれた。それでは“家業”を継ぐべく嫌々僧侶になったのかと思いきや、どうやらそうでもなさそうだ。白川さんは、昔から宗教的な感受性の強い少年だったようである。そんな彼にとって、お寺とはまさにうってつけの“実家”だったというわけだ――僕にはちょっとばかり、白川さんがうらやましい

彼は長じて高野山大学に進み、卒業後は大阪の書店に就職した。

「え、お坊さんになったんじゃないの?!」

とつい驚いてしまうが(w)、彼曰く、お坊さんになる前に一度、一般社会を経験しておきたかった、ということらしい。良い心構えだ。

彼が出家する日は、しかしながら案外早くやってきた。それまで住職をしていた彼の祖父が亡くなり、まだ若い白川さんが寺を継ぐことになったのだ。かくして、20代前半のうちに、彼は実家の寺の住職となったのであった。

本著の後半部分では、住職になって以降の彼の日常が、とてもユーモラスに綴られている。

 

1977年生まれとまだ若い――本著刊行当時、まだ33歳だった――白川さんの文章は、いかにも今どきの若い書き手の書きそうな、ポップな文体だ。たとえば、住職となって仏具を揃える過程を、RPGゲームでアイテムをそろえる過程になぞらえる。ゲーム世代ならではの比喩だ。

彼の書く文章は、気取った感じがなく、無駄な装飾のないシンプルな文章で、それでいてどこかユーモラスであり、ときに我々の胸を打つ。

あぁ、こういう感じの文体、前にどこかで見たな、どこだろう……と思っていたら、分かった。

昨年末に取り上げた小野雅裕さん『宇宙を目指して海を渡る』の文体に、とてもよく似ているのだ。このふたりは世代も近く、5歳しか違わない。そして、彼らの文章を読んで面白いと感じる僕もまた、彼らと世代が近い(小野さんの2歳下)

僕は、彼らの文体がとても好きだ。

 

本著にて、弘法大師空海の大成した壮麗なる密教の教えを、白川さんはいかにも今どきの若者らしいくだけた口調で、分かりやすく説明してくれる。

仏教を隅々まで吸収、血肉化して、自分の言葉で語れるようになった人のみが書ける、実に魅力的な文章だ。

僕は、白川さんのことが大好きになった。

 

 

……と書いておいて、こんなことを言うのもナンだが(;^ω^)

昨年取り上げた『宮崎哲弥 仏教教理問答』のなかで、最初に宮崎さんと対談した相手が、この白川さんであった。

正直に白状してしまうと、この時の僕は、白川さんのことをあまり面白いとは思わなかった。いや、面白くないというより、そもそもあまり印象に残らなかった、と言ったほうが正しい。この時、圧倒的に僕の印象に残ったのは、南直哉さんであり、釈徹宗さんであったからだ。

しかしながら本著を読んで、白川さんの書き手としての魅力が、だいぶよく理解できるようになった。

白川さん、どうもすみませんでした……m(_ _)m

 

ボクは坊さん。

ボクは坊さん。