Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第245回)

・『MEMO メモ』

女子高生が、なにやらメモを取っている。それも尋常な様子ではない。小テストの時間ですら、彼女は強迫観念に憑かれたかのように、答案の裏に必死にメモを書きつづける。

記憶障害なのか? 違う。

彼女は、強迫性障害なのだ。頭に浮かんだ言葉をすぐさまメモに取らないと気が済まない、という精神の病に苦しんでいるのである。

本作は、強迫性障害をテーマとした映画。監督にして主演を務めるのは、俳優の佐藤二朗さんだ

実を言うと僕は最近、この佐藤さんに注目しているのである。『銀魂』でも『HK/変態仮面』でも、彼は独特のキモイ(←誉め言葉です)存在感を醸し出しており、立っているだけで笑えるのだ(w)。彼の他に、立っているだけで笑える俳優は、板尾創路さんくらいのものだろうか。

その佐藤さん。なんと自身も強迫性障害の患者のひとりなのだという。本作の女子高生のようなひたすらメモを取りつづける症状も、実は佐藤さん自身が苦しめられてきた症状だというのだ。

彼は、それでも強迫性障害を決して暗く描こうとはしない。本作は、むしろほのぼのとしていて、随所に笑いが散りばめられており、明るい映画である。作中、女子高生が通う精神科の医師も、病と闘おうとするのではなく、病を受け入れて共存することを薦めるのだ。

病に悩まされつつもなお、毎日を前向きに生きていこう――佐藤監督の温かいメッセージが我々観客にも伝わってくる。実は僕自身、軽度の強迫性障害があるので、本作のおかげでずいぶんと癒された。

多少粗削りの感は否めないが、とてもさわやかな気持ちにさせてくれる作品だ。

 

 

・『裸のジャングル』

白人の男が、アフリカのサバンナに取り残される。丸裸の彼の前に、現地の狩猟民が襲い掛かる……

アクション・サスペンスである本作。実を言うと、以前ご紹介した『アポカリプト』の元ネタにあたる映画である。

たとえば、主人公が狩猟民のやり投げから逃げる過程で彼らのひとりを殺し、激怒した残りの狩猟民が復讐を誓う場面や、おじけづいた狩猟民のひとりをリーダー格の男が殺害する場面、最後に主人公が滝つぼに飛び込む場面など、なるほど確かに共通する場面が多くある。

これについて映画評論家の町山智浩さんは「重要なシーンは完全に盗作と言ってよいほど似通っている」とまで述べている。

だがその論法でいくなら、かの『タイタニック』だって過去の作品『SOSタイタニック』『歴史は夜作られる』と“重要なシーンは完全に盗作と言ってよいほど似通っている”。

映画というのは、多かれ少なかれ、過去の作品からの引用によって成り立っているのである。

 

裸のジャングル [DVD]

裸のジャングル [DVD]

 

 

・『わたしは、ダニエル・ブレイク

主人公のダニエルおじいさん。妻に先立たれ、どうやら自身も心臓病を患っているようだ。ところが生活保護を申請しようにも、役所は杓子定規の応対を繰り返すばかりで、まったく頼りにならない。

最近この街に越してきたという、母子家庭の親子。母親はなかなか職にありつけない。ようやく見つけた職はなんと……

ダニエルおじいさんの隣に住んでいる移民の青年。真面目に働いても低賃金なのでばからしいというので、中国から安く仕入れたスポーツシューズをブランド品と偽り売りさばいている。

本作は、彼ら貧困層の人々を描いた群像劇である。画面に映し出されるのは、現代のイギリスの地方都市の、実に寒々とした光景だ。

これと似た映画を、本ブログでは以前取り上げたことがある。『恋人たち』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』だ。いずれも、デフレのもとで苦しむ庶民たちに寄り添ってつくられた映画であった。

いまや、先進国の貧困層を取り巻く環境はどこの国でも共通なのだな、と痛感させられる。イギリスなのに、まるで日本を見ているかのようだ。

 

わたしは、ダニエル・ブレイク [DVD]

わたしは、ダニエル・ブレイク [DVD]

 

 

・『パッセンジャー

星間旅行が実用化した遠未来。目的地の系外惑星に向け航行している宇宙船のなかで、ひとりの男が人工冬眠から目覚めてしまった。実はまだ目的の惑星までは90年(!)もかかるというのに、あろうことか宇宙船内のシステム異常のせいで人工冬眠が解除されてしまったのだ。一度目覚めると、再冬眠はできない。男は自暴自棄に陥る。

……という内容のSF映画で、まぁここまでは良かったのだが、問題はその後。

男は、寂しくて寂しくてたまらない、どうしても会話の相手が欲しい、というので、ある美しい女性を人工冬眠から目覚めさせてしまう。再冬眠はできないわけだから、これは女性に「お前も犠牲になれ」と言っているに等しい。実際、事情を知った女性は激怒し、男の行為を「殺人」とすら呼んで非難する。

ところがここでタイミングよく宇宙船にさらなる異常発生。原因を探究する過程で、かつて小惑星が船に衝突し、船体に穴が開いていること、そして男の冬眠が解除されてしまったのも、そもそもはその衝突事故が原因であったことが判明するのである。

男はさっそく、穴を修理しに向かう。さっきまでさんざん人殺しと非難していたはずの女も「生きて帰ってきてね」などと甘い言葉を言って送り出す。無事修理に成功したふたりはそのままくっついて大宇宙のなかで幸せに暮らしました。オシマイ♪

「なんだこれは!」と唖然とした。いかにも童貞が抱きがちな、男からの一方的な好意と、なんだかんだでそれを受け入れてしまう都合のいい女の物語で、終始、男の勝手ばかり尊重し女性の都合を無視したダメ映画であった。

 

 

・『フィリップ、きみを愛してる!』

詐欺師というのは、なかなかに大した連中だ。ある意味では、彼らはとても地頭が良く、かつ根気のある人間なのである。

それをもっと別の方向に生かせばいいのに……といつも思うのだが(w)、さて本作はそんな詐欺師のお話である。実話だという。

ジム・キャリー演じる主人公の男。詐欺罪で刑務所に収監されるが、そこで“一目ぼれ”してしまったのが、金髪碧眼の青年・フィリップ。そう、男はゲイだったのだ。フィリップ青年のほうもソッチ系だったようで、ふたりはまもなく“恋人”となる。

その後、出所したふたりはフロリダで“夫婦水入らず”の毎日を送るが、男の詐欺癖はなかなか抜けず、たびたび逮捕。そのせいでついにはフィリップから愛想をつかされてしまう。どうしても彼に会いたい一心の男が、最後にとった驚愕の手段とは……

ゲイの世界では金髪碧眼は“ヒロイン”なのだそうな。そういえば現在放送中のアニメ『BANANA FISH』でも、やはり金髪碧眼の主人公の青年が刑務所仲間から“お姫様”呼ばわりされていたっけ。

 

フィリップ、きみを愛してる! [DVD]

フィリップ、きみを愛してる! [DVD]