Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』

経済評論家・上念司(じょうねん・つかさ)さんは、政治的には保守の立場、経済的にはリフレ派の立場から、地上波、ネット上などで日夜、精力的に情報を発信している。僕も、彼からはおおいに恩恵を被っている。

本日取り上げるのは、そんな上念さんの『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』講談社だ。

 

とても分かりやすく、勉強になる本だ。とりわけ興味深かった箇所を、いくつか挙げてみるとしよう。

たとえば、多チャンネル化の話。

僕は最近、海外のニュース番組をよく見ている。近年ではyoutube上にて、CNN、アルジャジーラ英語版などが常時ライブ中継を実施しており、自宅のパソコンで海外のニュース番組を見られるようになっているのだ。

海外のニュースは初めて知る新鮮な情報ばかりで、とても刺激的だし、勉強にもなる。日本のマスコミが報じない国際情勢に関する情報が、本当にどんどん入ってくるのだ。これら海外ニュースと比較すると、日本のニュース番組などバカらしくて見る気がうせてしまう。

どうして日本と海外とで、ニュース番組がかくも違うのだろう。上念さんによると、世界では――日本の隣国である韓国・台湾ですら――常識となっている多チャンネル化が、日本では一向に進んでいないからだ。

多チャンネル化されると、たとえばニュースチャンネルはニュースだけを見たい意識の高い人たちが見るようになる。そのためその内容は高度となり、その分野の素人にコメントを求めるといった事態――たとえば「報〇ステーション」みたいに生物学者に共謀罪についてコメントさせる、みたいな――は絶対にありえなくなる。

日本の場合、この多チャンネル化がなされていないから、とくにニュースを見たいわけでもない一般の視聴者が、ただ漫然とニュース番組を見るようになる。すると専門家よりも、なんとなく気の利いたコメントのできる人のほうが重宝されるようになる。かくしてショーンKさんのような詐欺師までもがコメンテーターの座に落ち着いてしまうというわけなのだ。

なるほど、だから日本のニュースは程度が低いのか、と腑に落ちた。

 

憲法の話も良かった。

上念さんは意外にも、ユダヤ教の話を引き合いに出す。ユダヤ教では土曜日が安息日に定められており、この日には一切の労働が禁じられている。だが「一切の労働が禁じられている」というのであれば、たとえば軍隊も警察も消防も病院も、土曜にはすべて休業しなければならないのだろうか。もし、この日に他国の軍隊が侵略してきたら?

ユダヤ人たちは、そこでこう考えた。旧約聖書にはたしかに安息日についての規定があるが、それはあくまで神を称えるという目的のための手段に過ぎない。もし軍隊や警察、消防までもが安息日に休んでしまうとなると、神を称える民族、すなわちユダヤ民族が全滅してしまうおそれが出てくる。そうした事態を神がお喜びになるとは到底思えない。

以上のロジックにより、今日のイスラエルでは軍隊、警察、消防、病院などは安息日でも例外的に休業しないのだという。

上念さんはこのロジックを、日本の憲法9条の問題にも適用する。もし日本が滅んでしまったら、それは日本国憲法の理念を実現する国家が消滅してしまうことを意味する。だとしたら「憲法典」――「憲法」でないのがポイント。以下の引用部分を参照されたし――に何が書いてあろうと、国家の自衛権を否定することは不可能である。

上念さんはこう書いている。

≪私たちはユダヤ教徒のように法典を積極的に解釈し、本来の目的を達成するための手段を柔軟に選択していくべきではないでしょうか? 日本国憲法という「憲法典」は、日本人の歴史、文化、伝統といったものを総合した日本の「憲法」という大きな氷山の一角でしかありません。「憲法典」には書いてなくても、「憲法」が当然想定している常識というものが、この国にはあるのです。≫(131頁)

 

夕張の話も面白かった。

周知のとおり、北海道夕張市財政破綻してしまい、そのせいで病院医療の縮小という「痛み」を余儀なくされた。

ところが上念さんによれば、今日の夕張ではむしろ高齢者の寿命が延びており、また当人にとって満足のいく死に方ができるようになった、というのだ。

これはいったい、どうしたことだろう。

キーワードは、「在宅医療」である。

上述のとおり、夕張市では財政破綻のため、もはや従来の病院の設備を維持することができなくなった。そのかわり同市は在宅医療に力を入れるようになり、それがかえって功を奏しているというのだ。

上念さんによれば、今日の日本の医療費のかなりの部分は、終末期医療に費やされているのだという。今日では、約9割もの人々が病院内で死亡しており、このことが実は医療費を大きく圧迫しているというのだ。その点、在宅医療であれば医療費はあまりかからず、当人も満足のいく死に方ができる。こう言っては不謹慎だろうが、“一石二鳥”というわけだ。

この箇所を読んで、僕は宗教学者・釈撤宗さんの著作を思い出した。釈さんは、宗教学者として、そして浄土真宗僧侶として、人々にとっての満足のいく逝き方(=生き方)とは何なのかを、著作のなかで模索しつづけてきた。

今日の夕張市を見たら、釈さんは何と言うだろうか。彼の著書の愛読者として、すこしばかり気になった。

 

ここまで上念さんを褒めてきたから、ひとつくらい苦言を呈しても許されるだろう(w

本著のなかに、≪多くの人が疑問に思っていることを、実際に財務省にメールして確かめた人がいます。「質問者2」さんという強者です。≫(171頁)という箇所があるのだが、この記述だけだと、この「質問者2」さんがいったいいかなる人物なのか、そもそも本当に人の名前なのか、と一般の読者は困惑するかもしれない。

僕はtwitterを見ているからよく分かる。「質問者2」さんとは、リフレ派の立場から積極的に発言しているツイッタラー(影響力あるtwitterユーザー)のことである。

本著ではせめて、「質問者2」という名前が彼のハンドルネームであることくらいは説明しておいたほうが良かったのでは、と思われる。以上、苦言オシマイ(w

 

本著ではこのほかにも、面白い話が盛りだくさんだ。

「大新聞が隠す~」というタイトルのとおり、本著を読んでいると、今の日本のマスコミは本当に大事なことほど国民に伝えていないという皮肉な現実がよく分かる。

もうマスコミなどを信用するのは、やめだ。上念さんのようにネットで活躍するジャーナリストたちを、これからは信頼することとしよう。