Furusawa Keisuke's blog

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書評『東京の島』

地図を広げてみよう。伊豆半島の右下あたりに、伊豆大島という文字通り大きな島があるのがわかる。東海道線からでも、よく晴れた日には熱海駅付近から、この伊豆大島をよく見渡せる。

その伊豆大島のさらに南方には、大小さまざまな島々が点在している。

これらは、伊豆諸島と総称される。

その名のとおり、かつては伊豆国(現在の静岡県に帰属していた島々であるらしい。どういうわけだか、明治以降になって東京府(現在の東京都)にとられてしまい、今日に至っている。静岡県は、いっそ同諸島の東京都からの奪還運動を展開してみてはいかがか?(w

その伊豆諸島の南端に、八丈島がある。

古来より、伊豆諸島の最も南にある八丈島は、いうなれば「世界の果て」に近い位置づけであり、かつては流刑地としても利用されていた。安土桃山期の武将・宇喜多秀家関ヶ原合戦後、この八丈島島流しにされたのである――大坂の陣の際には八丈島から泳いで大坂にはせ参じたというネット発の都市伝説もあるようだがw(;^ω^)

八丈島は南にあり、黒潮に囲まれているがゆえに年間を通じて温暖で、南国ムードが漂うのだという。ぜひ一度行ってみたいな、と前々から思ってきた。僕の実家のある沼津市からセスナかなにかで八丈島まで飛んでいけたら、どんなにか楽しいだろう、と子供のころからずっと思いつづけてきたのだ。

 

前置きが長くなったが、本日ご紹介する『東京の島』(光文社)は、タイトルの通り、東京(都内)にある島々をひとつひとつ探訪していくという旅行記である。

著者は、ライターの斎藤潤さん。

 

予備知識がないと、一般の読者たちは

「東京の島? はて、どこのことだろう。ってか、東京に島なんてあったっけ? お台場とかの埋め立て地のこと?」

と不思議に思うことだろう。

本著でおもに登場するのは、伊豆諸島だ。上述のとおり、同諸島はれっきとした東京都の島々である。

それだけではない。伊豆諸島のさらに南方に位置する小笠原諸島もまた、東京都なのだ。かつて、第二次大戦で激戦地となった硫黄島も東京都だし、日本の最南端、沖ノ鳥島も東京都である――本著では登場しないが、日本最東端の南鳥島もまた東京都である。東京都でけぇwwwww

斎藤さんは、これら「東京の島」をくまなく巡り、その旅行記を本著にまとめたのだ。

 

本著は、硫黄島の訪問記から始まる。

次に伊豆諸島を、伊豆大島からはじまって、上のほうの島から順々に取り上げていく。南端の八丈島青ヶ島まで紹介したら、今度は小笠原諸島だ。最後に、日本最南端の沖ノ鳥島の探訪記が掲載され、本著は幕を下ろす。

 

これらの島々は、当然ながら人口がかなり少ない。こう言っては悪いが、廃墟に似た印象を受ける――実際、廃墟化した建築物も本著では登場する。

僕は廃墟が好きだ。以前、実際に廃墟を訪れたこともあるし『廃墟探訪』という本を紹介したこともある。伊豆諸島、小笠原諸島にも、そんな廃墟と通じる魅力を感じる……と言っては、さすがに島民の方々に怒られてしまうか(;^_^A

 

これらの島々は、かつての火山活動によって造られた。今日でも、その痕跡はある。

伊豆大島では、たとえば、大きな火口が口を開けて観光客を待っている。戦前にはここで身投げする人も多く、自殺の名所として“栄えた”のだという(;^ω^) さすがに今日では自殺する人もいなくなったが、それでもなお、斎藤さんをはじめ多くの人々に強い印象を残す“何か”があるようだ。

伊豆諸島の中くらいにある三宅島は、2000年に大噴火をおこした。斎藤さんが訪れた際にはだいぶ平穏を取り戻していたようだが、それでもなおガスマスクの常時携帯が義務づけられていたという。島の探訪は、このようにときに危険を伴うのだ。

今なお地質活動が活発なのが、硫黄島だ。ここでは地盤の隆起が著しく、かつて海だった場所までもが今日では隆起し、陸地となってしまったのだという。

第二次大戦の激戦地である硫黄島は、したがって「死者の島」と言えるのかもしれないが、当の島自体は「生きている」のである。

 

本著のクライマックスを飾るのが、日本最南端、沖ノ鳥島の探訪記である。

斎藤さんは、民間の視察団の一員としてこの島に赴いたのだという。絶海の孤島である沖ノ鳥島に向かうため、船は沖縄から何日ものあいだ航行を続けた。外洋であるため、途中、船体が大きく揺れることもあったようだ。あぁ~、アカン、俺なら絶対船酔いする……w

それでもなんとか、船は沖ノ鳥島へと到着した。天候次第では上陸も危ぶまれたようだが、斎藤さんはなんとか上陸できたようだ。本著には、その時の写真も収められている。

斎藤さんいわく、沖ノ鳥島はとても暑いとのこと。それもそのはず、同島は日本で唯一、熱帯に属す島なのだ。

そうか。沖ノ鳥島には植物がないのでなんとなく熱帯という感じがしないのだが――というか、気候帯という概念自体が、この島からは全く思い浮かばない――沖ノ鳥島は台湾よりも南に位置する、れっきとした熱帯の島であったのだ。

う~む、沖ノ鳥島、なんだか行ってみたくなったな。でも船酔いが怖い(w

 

そんな沖ノ鳥島も、もちろん東京都である(w

何年か前、東京から一番遠いのは、東京(都)でした、とかいう宅配便のCMがあったと記憶している。

本当にそのとおりだということがよく分かる一冊であった。

 

東京の島 (光文社新書)

東京の島 (光文社新書)