Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『サンスクリット』

中学のころ、僕は英語の文法に強く魅せられた。

一見するとただのデタラメな単語の羅列に見える英語のなかに、よぉく見ると、ちゃんと法則性が存在している――中学生の僕は、この事実にとても感銘を受けたのだった。

そして、英語が一気に好きになったのだ。小学生のころから、僕は会話主体の英語塾に通っていたのだが、学校での英語の成績はイマイチだった。ところが英文法に感動して以降、僕の英語の成績はみるみる向上、ついには得意科目のひとつにまでなったのである。

それからの僕は、英語のみならず世界の言語、とりわけ欧州の言語に強い関心を持ち、百科事典をひもといて自分で調べるようになった。

驚いたことに、ヨーロッパの言語は――ハンガリー語などのいくつかの例外を除けば――元をたどれば皆同じだということが分かった。英語もドイツ語もともにゲルマン系の言語であり、元は同じである。ところがさらにさかのぼると、フランス語などのラテン系の言語(ロマンス諸語という)やロシア語などのスラブ系の言語なども、元は皆同じであることが分かったのだ。

話はこれで終わらない。もっとさかのぼると、なんとインド(!)の言語までもが元は同じであるという。それゆえ、これらの言語グループは「インド・ヨーロッパ語族印欧語族と呼ばれているのだという。

なんと、インドの言語までもが英語の遠い親戚だったとは! 中学生の僕は、とても驚いたものだ。

 

そのインドの言語のなかでも、最も古くからの文献が残っているもののひとつが、サンスクリットである――「サンスクリット語」とも呼ばれる

本日取り上げる本は、そんなサンスクリットについて解説してくれる書籍、タイトルもずばり『サンスクリット白水社である。

 

本著を読むと、サンスクリットはやはり「神の言語」なのだな、と思わずにはいられない。単に宗教の世界で権威ある言語と見なされた、というだけではない。その文法が、あまりに完璧なのだ。

たとえば、動詞の人称変化。英語では人称変化といえば、せいぜい三人称単数現在形で動詞の語尾に-(e)sがつく程度である。ところがサンスクリットの場合、まず単数、複数のほかにもうひとつ、「双数」なる聞き慣れないカテゴリーがあるのだ。

つまり「私」(単数)と「私たち」(複数)だけでなく「私たちふたり」(双数)というカテゴリーが存在するのである。同様に、「あなたたちふたり」(二人称双数)や「彼らふたり」(三人称双数)だって存在する。

人称は英語同様に三人称までなので、これに単、双、複、三つの数をかけて、3×3=9通りもの人称変化が考えられることになる。せいぜい三単現のsがつくだけの英語とは、次元が違うのである(;^_^A

 

名詞だって負けていない。サンスクリットの名詞には、7つの格がある(※)

※一般にはサンスクリットの格は8つとされるが、本著では7つと説明されている。おそらく呼格をどう扱うかという違いによるのだろう。

「格って何?」と思われるかもしれないが、英語にだって所有格という格がある。要するに日本語の「てにをは」にあたる文法的機能のことである。

ドイツ語には主格、属格、与格、対格という4つの格があるが、サンスクリットの場合、それがなんと7つにも及ぶ。もちろん、これに先ほどの単、双、複の三つの数の区別が加わるから、7×3=21通りもの名詞の変化が考えられるということになる。ゲンナリさせられるだろう?(w

さらに悪いニュースを付け加えれば、サンスクリットの名詞にはドイツ語やロシア語と同様、男性、女性、中性という三つの名詞性ジェンダーが存在する。それぞれの性で変化の仕方も異なるのだ。

……もう、頭が爆発するねw(;^ω^)

 

サンスクリットは、我々日本人には残念ながら、発音もなかなか難しそうだ。

たとえば、t音ひとつとっても、歯音のtと反舌音のt(tの下に点がついた形で表記される)がある。このそれぞれに、さらに有気音と無気音の対立がある。

有気音というのは読んで字のごとく、空気(息)を伴う音のことである。たとえば口の前に紙を垂らしてみて、息を伴って「パッ!」と発声してみる。このとき口の前の紙がちゃんと揺れれば、それが有気音である。日本語にはないが、中国語や韓国語にはこの有気音がある。

 

ことほどさように実にめんどくさ~いサンスクリットであるが(w)、本著によれば、この言葉は実に息長く、インドにおいて政治・学術の共通語として機能しつづけたのだという。

今日でこそ、インドの共通語としての地位を英語に譲ってしまったものの、今日でもなおサンスクリットは生きた言語である。本著によればいまだにサンスクリットで授業をやる大学もあるというのだから、驚きだ。

 

かつて、空海も学んだとされる、サンスクリット

どうだろう。これを機に、皆さんもこの言語を学んでみては如何かな?

――僕ですか? 僕はその前に、まず英語を勉強し直すところからはじめます(w

 

サンスクリット (文庫クセジュ)

サンスクリット (文庫クセジュ)