Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

最近見た映画の感想(第255回)

・『mommy/マミー』

カナダはケベックにて暮らす、元ヤンの母親とADHD(注意欠陥・多動性障害)の息子を描いた作品。

本作で面白いのはストーリーもさることながら、そのアスペクト比だ。スタンダードサイズ(4:3)よりももっと狭い、これはもはや正方形なんじゃないか(w)、というくらいのアスペクト比である。

それが、ある場面になると急にぐーんと広がって、普通のビスタサイズ(16:9)となり、またある場面になると今度はシューっと狭まって、元の窮屈な正方形に戻ってしまうのである(w

どうやら、登場人物の気持ちが開放的になると画面もビスタサイズとなり、反対に閉鎖的になると正方形に戻るようだ。アスペクト比によって登場人物の心境を表現しているのである。ほぅ、面白い演出だな、と思った。

言っちゃ悪いが見るからに品のない母親は、それでもADHDの息子にはつねに慈愛を注ぎつづける。

世の中に、ADHDの人はそう多くない。だが世の男性とその母親の多くは、程度の違いこそあれ、実は本作の親子のような関係性にあるのではないか――これには当然、僕自身も含まれる

迷惑をかけつづける息子と、なんだかんだ文句を言いながらも、それでもなお彼を愛おしむ母親。

 

 

・『GONIN』

社会からドロップアウトしてしまった男5人組が、ヤクザの事務所から大金を強奪することに成功する。ヤクザはもちろん黙っちゃいない。さっそく殺し屋を雇い、5人への報復に打って出る。

本作の主人公5人のなかでひときわ強い存在感を放っているのが、モックンこと本木雅弘だ。本作にて彼が演じるのは、なんと男娼(売春する男性)! ケバい衣装とメイクで登場する彼の姿は、そんじょそこいらの女よりもよっぽどエロティックである(;^ω^)

そんなモックンと佐藤浩市演じる主人公格の男が次第に親密になり、BL的とすら言える関係性になっていく。それが本作の見どころのひとつだ。

本作のもうひとつの見どころは、竹中直人演じるサラリーマン。これがまたなんとも病んだ性格の持ち主で(w)、大金強奪後、自宅へと帰るのだが、その自宅は“とんでもない状態”になっていた。詳しくは本作を見てほしいが、この場面は、そこにいたるまでのヤクザの恫喝、暴力シーンなどよりも、はるかに恐ろしい。

BLやホラーの要素も散りばめた、一風変わったヤクザ映画だ。石井隆監督による映像にも独特の風情があり、美しい。

 

GONIN

GONIN

 

 

・『サンブンノイチ』

さきほどの『GONIN』同様、こちらも銀行強盗で大金を獲得した男たちの物語である。ただし、芸術色の強かった『GONIN』とは異なり、こちらはだいぶエンタメ色の強い娯楽作へと仕上がっている。

主人公格の3人の男は、それぞれ人生に行き詰り、社会からドロップアウトしてしまった負け犬ばかり(←またですかw)。そんな彼らが、銀行強盗で大金を得て自らの人生をリセットしようとする。

ところが彼らの前には、凶悪なギャングや、地元の裏社会で悪名高い金貸しの婆さんなど、なんともアクの強い敵役たちが立ちはだかる。彼らに対し、3人は知恵を使った駆け引きで立ち向かう。

そんなこんなで、本作はどんでん返しに次ぐどんでん返し、キツネと狸の化かし合い的な心理的駆け引きを描いた犯罪映画に仕上がった。

まるでアメリカの犯罪映画を見ているかのようだ。エンディングで主要キャストの顔と名前が両方表示される演出も、往年のアメリカ映画を彷彿とさせる。

『GONIN』とはまた違った、魅力のある犯罪映画であった。

 

 

・『高校大パニック』

先日、本ブログにて取り上げた『爆裂都市 BURST CITY』石井聰亙監督(今日では岳龍に改名)

彼のデビュー作にあたるのが、この『高校大パニック』である。

本作は8ミリフィルムで撮影された、上映時間約15分という短編の自主制作映画。よって画質は荒いものの――その点、以前取り上げた黒沢清監督デビュー作『神田川淫乱戦争』と似ている――当時まだ19歳だった石井監督の若々しいエネルギーと才覚を感じさせる。

突如として高校に銃を持った男子生徒が乱入、教師を射殺し、校舎内に立てこもる。ただちに警察が駆けつけ、徐々に彼を包囲していく。

じりじりと追いつめていく警察。不安げな表情の女子高生たち。石井監督はそれらをカメラに収め、受験地獄、校内暴力が社会問題となっていた当時(1976年)の社会の空気を切り取ることに成功したのだった。一見単調なBGMにも、不思議な魅力がある。

 

高校大パニック+1/880000の孤独 [DVD]

高校大パニック+1/880000の孤独 [DVD]

 

 

・『狂い咲きサンダーロード

こちらも石井聰亙監督による作品。暴走族の青年を描いたバイオレンス・ムービーだ。

暴走族の主人公、日頃からやんちゃな行為を繰り返しているが、ある日ついに他の暴走族につかまり、ボコボコにされてしまう。

そんな彼に救いの手を差し伸べたのは、意外にも右翼団体であった。

小林稔侍演じる右翼団体幹部の男――おまけにゲイでもある!――にスカウトされた主人公たちは、さっそく右翼団体にて訓練を受ける。だが団体内でのイデオロギッシュでがんじがらめの毎日に嫌気がさし、主人公はさっさと右翼団体を離脱、因縁の暴走族への復讐に単身乗り出す。

面白いのは、小林稔侍が登場する場面。なんと君が代を口ずさみながら登場するのだw(;^ω^) まるで悪役のテーマソングのような、実にカジュアルな君が代の扱い方である。おまけに主人公は「わけの分からない歌うたってんじゃねーよ!」と返す。

本作公開当時(1980年)における君が代の社会的イメージがよく分かる一コマだ。

このほかにも、右翼団体での思想教育のシーンでは、当時の日本の仮想敵国が中国ではなくソ連だとみなされていたことも分かり、とても興味深い。

もちろん、クライマックスとなる終盤のアクションシーンもスリル満点だ。

個人的には、『爆裂都市 BURST CITY』よりも本作のほうが好みである(w

 

狂い咲きサンダーロード [DVD]

狂い咲きサンダーロード [DVD]