Furusawa Keisuke's blog

政治から映画、アニメ、将棋まで幅広く語ります。

書評『論文の教室』

昨日は、『難解な本を読む技術』という本を取り上げた。

さぁ、「読む」の次は、「書く」だ(w

 

実を言うと、僕はこの「書く」という行為が、どうにも苦手なのだ。

「またまたぁ!(w そんな、毎日こつこつブログを更新なさってる方がご謙遜を(w

と笑われるかもしれないが、いやいや、ホントなんだってば!(w

僕は「書いている途中、そもそも自分は何について書いているのかよく分からなくなる病」なのである。そのため、難しい本を読むための方法と並んで、文章を書くための方法に関する本も読んでみたいな、と前々から思っていたのだ。

 

というわけで、本日ご紹介する本は『新版 論文の教室 レポートから卒論まで』(NHK出版)である。

著者は、科学哲学を専門とする、戸田山和久さん。

 

なんかタイトルだけ聞くと、お堅そうな内容の本に思えてくる。実際、僕も本著の最初のページをめくるまではそう思っていた。

ところが……。

≪世の中には数えきれないほどの「論文の書き方本」がある。そうした類書と本書の最も大きな違いはつぎの点にある。≫(9頁)

なんだろう?

≪それは、これら無数の類書の中で、この本だけが私によって書かれたということだ。≫(同頁)

ファッ!?

≪この違いは読者のみなさんにはどうでもいいことかもしれないが、私にとってはとても重要である。なぜなら、売れゆきが私の経済状態にかかわりをもつのは本書だけだから。≫(同頁)

ファーwwww

……そう、本著はと~っても、お笑いの精神に満ち満ちた本だったのである(w

実際、上の引用箇所の後はこう続いている。

≪というわけで、私はなるべく多くの方々に読んでいただきたいと念じつつ本書を執筆した。もっとストレートに表現するならば、売らんかなの精神で書いた。……さて、本を売るにはどうしたらよいだろう。タイトルを『ハリー・ポッターと魔の論文指導』にして、腰巻きに「ワーナー・ブラザース映画化決定!」と印刷してもらえばよいのではないかという名案も浮かんだ。そうすれば、間違って買う人だけでも相当の数に及ぶのではないか。しかし、この計画はNHK出版の賛同を得ることができなかったので頓挫した。≫(同頁)

誤解なきよう。とくに面白い箇所を抜き書きしているのではない。本著は終始こんなノリなのである(w

論文指南の書といえば、本ブログでは今春、ウンベルト・エーコ『論文作法』という本を取り上げた。アレも、エーコの語り口がとてもユーモラスで、楽しみながら読書することができたのだが、それでもやはりヨーロッパ人であるだけに、例に挙げられる事物や書物が欧米のものばかりで、我々日本の読者にはイマイチよくピンとこない、という難点があった。

その点、本著はちゃんと日本人である戸田山さんが書いているため、例が分かりやすいし、お笑いの感性も日本人のそれである(w

本ブログでは以前にも、このようなお笑いの精神に満ちた本を取り上げたことがあった。

経済学者・松尾匡さんの『対話でわかる 痛快明快 経済学史』。僕のお気に入りの経済学入門書である。どうやら僕は、このテのノリの本が大好きであるようだ(w

 

タイトルからも分かるとおり、本著は文章のなかでもとりわけ論文の書き方について教えてくれる本である。

論文とは「型にはまった」文章である、と定義する戸田山さんは、本著前半部にてその論文の「型」について詳しく、そして面白おかしく(w)解説している。

続いて中盤にて、今度は論文を書くにあたって必要となる「論証のテクニック」について解説を加えている。

ここで戸田山さんが取り上げるのが、演繹的論証と帰納的論証の話。

言うまでもなく、論証として“強い”のは、演繹的論証のほうである。≪仮にそこで使われている根拠が一〇〇%正しければ、主張も一〇〇%信用してよくなるような論証≫(164頁)、それが演繹的論証だからだ。

一方、「あの人もこの人も一人旅したことがあるんだから、みんなしたことがあるんだ」というタイプの論証が、帰納的論証である。こちらは先の演繹的と比べると、“弱い”。例外が考えられるからだ。

ハイ、本ブログの読者の皆さん! 以前、これと同じことを言っていた経済学者の先生がいたのを覚えていますね? ……そう、岩田規久男さんだ。

 

本著において、個人的に一番タメになったのは、アウトライン(文章のおおまかな骨組み)とパラグラフ(文章の構成要素)に関する説明だ。僕はいままでこれをおろそかにしていたから、上述の「書いている途中、そもそも自分は何について書いているのかよく分からなくなる病」に苦しめられたのだろう。

本著のおかげで、僕のこの“持病”も少しは緩和されそうだ。

 

本著終盤では、論文の引用ルールや、論文に限らない文章一般の書き方指南まである。したがって卒論、修論に苦しんでおられる(w)学生さんたちだけでなく、僕のような一介のブロガーにとっても、とても参考になる。

さっそく本著での戸田山さんのアドバイスを、今後のブログ記事にいかしていきたいと思っている。

 

いやぁ、それにしても、戸田山さんの文章は実に面白い。読んでいるだけでクスクス笑えてくる。

実を言うと、本著を読んでいるとき、僕はある嫌な出来事に見舞われた――といっても、僕以外の第三者から見れば「何? そんなクダラナイことでいちいちカッカしてたの?(w」と笑われてしまう類の些事に過ぎないのだが。ふつう、こういう嫌なことがあると僕は読書に専念できなくなってしまうのだが、本著に限っては、読んでいるうちに嫌なことなどすっかり忘れて、また読書に専念できるようになった。これも、戸田山さんの面白おかしい文章の“効用”のひとつだろう。

僕は、すっかり戸田山さんのファンになってしまった。彼の著作を、これからちょくちょく読んでみたい。

 

新版 論文の教室 レポートから卒論まで (NHKブックス)

新版 論文の教室 レポートから卒論まで (NHKブックス)