Furusawa Keisuke's blog

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書評『習近平が隠す本当は世界3位の中国経済』

昨日は『台湾人と日本精神』という本を取り上げた。

その本のなかで、「運命共同体としての台湾と日本」と題された一節があった。まさしく然り、台湾と日本は中国に対峙するという意味でまさに運命共同体にほかならない。

ではその中国のほうは、これから先、いったいどうなるのだろう。

というより、現時点ではどうなのだろう。

 

そんな疑問にこたえてくれるのが、本日ご紹介する『習近平が隠す本当は世界3位の中国経済講談社である。

著者は、経済評論家の上念司さん。本ブログではこれまで、上念さんの著作を複数取り上げてきた。

 

第1章にて、上念さんは中国政府がいかにしてGDP統計を偽造しているかについて詳述している。

中国のGDPについては高橋洋一さんも同様の指摘をしていた。上念さんは高橋さんの議論を大枠で肯定しつつ、高橋説への反論も紹介し、さらにそれへの再反論を行うことによって、より精緻な分析をほどこしている。

第2章では、中国がこれまで“猫をかぶっていた”ことを指摘。上念さんはこの章のなかで、本ブログでも以前取り上げたマイケル・ピルズベリーの『China 2049』の議論を参照している。

上念さんによれば、中国はリーマンショックで西側先進諸国が苦しんでいるのを見て「俺たちの時代到来!」と錯覚してしまったのだという。それでかなり早いタイミングで牙をむいてしまったのが、結果的にあだになった、と見ているのだ。本来、中国はもっと国力を蓄えるまで猫をかぶりつづけ、米国の目を欺く必要があったのである。

これは、中国共産党政権にとっては、もう本当に取り返しのつかない、致命的な過ちであったと言えるだろう。もっとも、我々西側の人間からすれば、彼らの蹉跌はまたとない僥倖なのであるが(w

 

第3章では再び偽装統計の話に戻って、GDPに限らず中国当局がいかに経済統計を偽装しているのかが明らかにされる。

……もはやこれがかの国の常識なのか、と読んでいて溜息が出るほどだ(;^ω^)

続く第4章では、円高などのせいでやむにやまれず中国進出したはいいが、人件費の高騰などの理由で結局は撤退を余儀なくされる日本企業の話が紹介されている。

そういえば先日も、経団連の爺さん連中が大挙して中国を訪れていたが、彼らに本当に学習能力はあるのだろうか、と心配になってくる(;^_^A

さて、「人件費が高騰した」のは、いったいどうしてか。

それは、農村から都市への人口流入がひと段落ついてしまったからである。

一般的に、これがひと段落つくと、その国の高度成長は終わり、安定成長の時代に入る。中国は、すでに高度成長を終えてしまったのである。

 

第5章では、大気汚染の問題にしろAIIBアジアインフラ投資銀行の問題にしろ、習近平政権がいよいよ末期的状況を呈していることが浮き彫りにされる。

そして終章となる第6章にて、これからはじまる米中新冷戦が日本にとって“福音”となる可能性が指摘されるのである。

これは、どういうことだろう。

たとえば、新冷戦によって日本は軍事支出の拡大を余儀なくされるだろうが、これは経済的に見れば、政府による財政出動の一種と考えられるのだ。財政出動は、デフレからの脱却が目前に迫っている現下の日本経済にとってプラスに作用する、と上念さんは言うのである。

懸念される中国経済崩壊の影響も、巷で言われるよりかは軽微であることを、上念さんは具体的なデータを挙げながら明らかにしている。

 

さて、これらすべての章にて、上念さんは具体的に数字のデータを挙げながら論証を進めている。

彼はときに、国際機関のデータをもとに自分でExcelかなにかでグラフを作成しながら、「このふたつは相関係数が〇〇なので強い相関があると言えます」「これらは相関係数が〇〇以下なので相関関係はないと判断されます」……といったぐあいに、論証を進めていくのだ。

彼の手法は、とても科学的である。あるいは“理系的”とすら言っていいかもしれない。だがこれこそが、経済学という学問なのだ。

経済学は、社会科学のひとつであるから、一般的には文系の学問に分類されるのであろう。しかしながら経済学は同時に、数学を頻繁に駆使する学問でもあるのだ。むしろヘタな自然科学などよりよっぽど数式を使うのではないか、とすら思えるほどだw(^▽^;)

本著を通じて、我々はそんな“理系学問としての経済学”を垣間見ることができるのである。

 

本著を通読して感じたのは、中国共産党政権のいう「社会主義市場経済」なるシロモノには、やはり無理があったのではないか、という今更ながらの疑問である。

現下の中国社会が抱える諸問題の原因は何か、をつきつめて考えていくと、結局はかの国の「一党独裁」という歪んだ体制へと行きつく。

「いやいや、中国は昔から専制の国だったじゃないか」と反論されるかもしれない。たしかにかの国に民主主義の伝統はないかもしれない。だが、それをいうなら昔の中国には資本主義だってなかったのである。

現在の中国は、「独裁体制+資本主義」という、従来の中国にはなかった、というより、かつてのナチス・ドイツやイタリアをしのぐ規模であるという点で、世界史のいずれにも存在しなかった極めて特異な体制なのである。

何が起こっても、おかしくはないのだ。

 

習近平が隠す本当は世界3位の中国経済 (講談社+α新書)

習近平が隠す本当は世界3位の中国経済 (講談社+α新書)